HPVワクチンの3回目の接種を受ける19歳の女性(右)=愛知県岡崎市の花田こどもクリニックで

 若い女性を中心に年間約1万人がかかり、約3千人が亡くなる子宮頸(けい)がん。予防にはヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの効果が高く、国は一時取りやめた積極的な接種の呼びかけを2年前に再開した。一方で、打つ機会を逃した世代への「キャッチアップ接種」は本年度で終わる。半年間に計3回打つ必要があり、医師たちは啓発に努めている。4月9日は子宮頸がんを予防する日-。 (河野紀子)

◆半年間で3回接種

 「将来のことを考えてワクチンを打とうと決めた。これで安心できる」。愛知県岡崎市の花田こどもクリニックで3月下旬、キャッチアップ接種の3回目を終えた大学2年の女性(19)が笑顔を見せた。  県外の大学に進学し、岡崎市の実家に帰省するタイミングで昨年9月に1回目の接種を受けた。人気ユーチューバーの20代の女性が、子宮頸がんの前段階の病変が見つかって手術すると報告する動画を見て、「人ごとじゃない」と真剣に考えたという。  子宮頸がんは主にHPV感染が原因となる。性交渉で感染し、コンドームでは完全に防げないため、初めての性 交渉の前にワクチンを接種することが大事だ。海外では多くの国で公費による接種が行われている。  国内では、2013年4月、小6~高1相当の女子を対象に原則無料の定期接種に。一方で、接種後に体の痛みを訴える人が相次ぎ、国は2カ月で積極的な接種の呼びかけを中止した。約7割だった接種率は、1%未満に低迷した。  その後、安全性が確認されたとして、22年4月に呼びかけを再開。現在は、何種類のタイプのウイルスに対応するかによって、2価、4価、9価の3種類のワクチンがあり、選んで接種できる。子宮頸がんの予防効果は2価と4価で約70%、9価で約90%とされ、接種率は上がっているものの、以前の水準までには回復していない。  国は約9年間の呼びかけ中止の期間中、接種の機会を逃した人への救済措置として、キャッチアップ接種を実施。1997~2007年度生まれの女性が対象で、本年度中は無料で接種を受けられる。  ただ、認知度不足が課題だ。国が昨年1~2月、高2相当から1997年度生まれまでの女性約千人に行ったインターネット調査では、キャッチアップ接種を知らない人が53%だった。

◆高1も最後の機会

 同クリニック院長で、岡崎小児科医会会長の花田直樹さん(71)は「キャッチアップ接種での受診は少ない。さらなる啓発が必要だ」と話す。  一般社団法人「HPVについての情報を広く発信する会(みんパピ!)」代表理事で、産婦人科医の稲葉可奈子さんは「子宮頸がんは20~40代の女性が多く、子どもを残して亡くなることがあり『マザーキラー』とも言われる。ワクチン接種により、高い確率で予防できる」と指摘。接種が進んでいるオーストラリアでは、子宮頸がんの患者が大幅に減り、将来的に撲滅できると予想されている。  キャッチアップ接種と共に、定期接種の最終学年になる高1相当の女子も、無料で打てる最後の機会となる。稲葉さんは「本年度中に3回を終える必要があり、遅くとも9月までに1回目の接種を」と訴えている。


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