7月の記録的な大雨による秋田県の農林水産関係の被害額は、これまでに分かっているだけで109億8400万円余りに上っている。(8月9日時点の県のまとめ)

秋田県由利本荘市は河川の氾濫が相次ぎ、大きな被害が出た。市内でコメや果樹を栽培する若手農家は、栽培面積を拡大して生産意欲が高まる中で今回の大雨に見舞われた。被害は農地だけではない。

由利本荘市西目町の農家・齋藤颯さん(21)と齋藤諒汰さん(27)。2人は同じ地域で農業を営む仲間で、それぞれがコメや果樹などを生産している。

 齋藤颯さん:
「これがうちの田んぼで、川があふれたときに砂が入っちゃって。手前にあった稲は砂をかぶって全部駄目」

7月の大雨を振り返り、齋藤颯さんは「プールみたいな状態。稲は全く見えないし、俺らは見ていることしかできなかった」と話す。

齋藤諒汰さんも「去年以上に力を入れていたところもあるので、一発目でこれか…」と肩を落とす。

この地域の農家は年々減少していて、2人は2024年から地域の農家から土地を引き継ぎ、栽培面積を増やした。生産意欲が高まり、収量の増加を期待していた中で大雨に見舞われた。

記録的な大雨から3週間がたち、田んぼの横を流れる川は穏やかに見えるが、川底には土砂が堆積していて、少しの雨でも水があふれる恐れがあるという。

齋藤諒汰さんによると、普段の川は、いまよりも40~50センチは深いという。

また、齋藤颯さんは「このあと台風7号、こっちの方に来そうなのがあるから、どれだけ雨が降るか分からないけど、雨の量が一番心配かな」と表情を曇らせた。

被害は農地以外にも及んでいる。

齋藤颯さんによると、田んぼに水を引いていた川に土砂が入り込み、一部がえぐれてしまった。そこを直さないと水を引くことができないという。

また、収穫したコメの乾燥と出荷までを担うJA秋田しんせいのカントリーエレベーターが水に漬かった。2人の田んぼは例年、9月下旬から3週間ほどで稲刈りを終えるが、「刈るスピードも上げられない。乾燥の施設も使えないからその分をほかでカバーしなきゃいけないというので、普段より時間がかかるし、日数もいままでよりかかるんじゃないかな」と齋藤諒汰さんは話す。

稲刈りが長引くとコメが育ちすぎるほか、果樹の収穫時期に重なり、手が回らない可能性がある。

 齋藤諒汰さん:
「いままで通りに田んぼの状態を戻せれば一番良いが、そう簡単にできるものじゃない。去年も大雨があったし、毎年こんな感じで続くとなれば、ちょっとね。できるところはとって、また来年できるか分からないけど、やっていければ良いかなという感じ」

大雨に猛暑…毎年異なる気象に振り回されながらも、農家は前を向こうとしている。

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