(ブルームバーグ):31日の日本市場では銀行株が急騰して株が大幅高。日本銀行はこの日の金融政策決定会合で追加利上げを決定した。債券は売られ、円相場は1ドル=151円台に上昇した後、153円台まで下落するなど荒い値動きとなった。
日銀は政策金利の無担保コール翌日物金利を、従来の0-0.1%程度から0.25%程度に引き上げた。利上げはマイナス金利政策を解除した3月の会合以来。声明文では、経済・物価が見通しにおおむね沿って推移している状況を踏まえ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現という観点から「金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した」と説明した。
長期国債買い入れの減額計画も発表した。月間6兆円程度としている買い入れ額を原則四半期ごとに4000億円程度ずつ減らし、2026年1-3月に3兆円程度にする。
T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、日本株は相場の重しになっていた金融政策の不透明感が払拭されたことを好感していると述べた。市場は金利上昇・円高方向へのボラティリティーの高まりをワーストシナリオとして想定していたが、為替のボラティリティーは限定的で日本株は堅調だと指摘した。
株式
株式相場は追加利上げの発表を受けて買いが優勢となり、大幅高で終了した。金利上昇が収益にプラスに働く銀行や保険など金融株が一段高となり、午前は下げが目立っていた半導体関連株も取引終了にかけて急速に買われた。
TOPIXの業種別上昇率1位は銀行指数。構成銘柄すべてが値上がりし、4.7%高と22年12月以来の上昇率を記録した。大和証券の阿部健児チーフストラテジストは結果発表前のリポートで、市場では追加利上げは見送るとみられていたため、「追加利上げが決定されればサプライズ」と指摘。為替市場で「円高・ドル安が進行し、相対的に内需株、金融株にポジティブ」に働くとみていた。
東京エレクトロンなどハイテク株も急騰。米国が検討する新たな対中半導体輸出規制で日本や韓国、オランダを除外すると、ロイターが午後に報じた。大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、対中半導体規制は「7月下旬から日本株が下げた大きな要因の一つ」だったとし、除外の報道は「相当な買い戻し材料」になり、半導体関連株の上昇はしばらく続くとみている。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、日銀決定会合の結果はおおむね想定通りとした上で、8月15日に発表される4-6月期実質GDPなど経済指標で景気堅調の確信が持てれば、日経平均は最高値更新の可能性もあるとみている。
債券
債券相場は大幅安。日銀の追加利上げで売りが優勢となった。同時に発表された国債の買い入れ減額計画でサプライズがなかったことから買い戻しの動きが強まる場面もあった。
長期国債先物市場で中心限月9月物は午後の取引開始後に前日比77銭安の142円60銭まで下落。その後143円16銭まで戻した。
東海東京証券の佐野一彦チーフ債券ストラテジストは、日銀決定会合の公表文では経済・物価が見通しに沿えば利上げを続けるとしており、タカ派的だがその割に市場は落ち着いていると述べた。次の利上げは「早ければ12月、来年1月くらいに25bpの利上げを織り込むとみている。その先の2年後などの織り込みが弱く、5年債など中期債には一定の上昇圧力が残る」と指摘した。
為替
円相場は乱高下。日銀の追加利上げ決定を受けて円はいったん買われたが、直前の観測報道で織り込み済みとの見方から売り戻された。その後は再び円買いが優勢になり前日終値付近で推移している。
野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、直前の観測報道で利上げ期待が高まっていたので円相場は「セル・ザ・ファクト」の展開になっていると述べた。その上で、声明は利上げ期待をつなぎとめるような内容で、インフレ見通しも上方修正されており、円高方向に効きやすいのではないかとみている。
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