28日の東京外国為替市場の円相場は下落し、一時1ドル=161円台前半を付け、1986年12月以来、38年ぶりの安値水準を更新した。月末で輸入企業の決済のための実需の円売り・ドル買いが膨らんだとみられる。為替介入を主導した財務省の神田真人財務官が退任することが伝わり、円売りが一時加速したとの見方もある。
28日朝方は1ドル=160円台後半で推移し、午前10時ごろに161円台に到達。午後5時時点は前日比38銭円安・ドル高の1ドル=160円92銭~94銭。
円安が進んだ理由として、大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは「実需の(円売り・ドル買い)取引がそれなりの規模で出た」と分析する。また、為替介入を指揮した神田氏の退任は、以前から市場で予想されていた。円安へのけん制効果が薄まるとの見方から、「これまでの円売りの材料になっていた」と指摘する。
政府・日銀は1ドル=160円台を付けた4月から5月にかけて総額9・7兆円の円買い・ドル売りの為替介入を実施。一時は151円台後半まで円高・ドル安が進んだが、約2カ月で元の円安水準に戻った。
円安加速の背景にある日米の金利差は、仮に日銀が追加利上げをしても大幅に縮小することはなく、当面は歴史的な円の安値水準が続くとの見方が多い。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「少額投資非課税制度(NISA)による海外株への投資の流れも円安の圧力になっている」と指摘。「次の介入水準は1ドル=164円台になるのではないか」と予測している。【成澤隼人、井口彩】
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