(ブルームバーグ): ドイツのショルツ首相は27日、ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議で、域内の軍事能力を高めるための追加資源が必要だとする他の加盟国首脳を押し切り、共同防衛支出に関する文言を声明から削除するよう主張した。

  今回の首脳会議で、加盟国首脳は今後5年間のEUの戦略的優先課題を確認し、合意した。だが、ショルツ氏は、国内予算が厳しい状況下でEUの能力不足を補うための共同支出増加に反対した。

27日、ブリュッセルでのEU首脳会議に出席したドイツのショルツ首相Photographer: Ksenia Kuleshova/Bloomberg


  「懸念がひとつある」とショルツ氏は会議後、記者団に語った。「防衛費調達のためにいわゆるユーロ債を発行することを受け入れるべきか?答えはノーだ。各国の国防予算をEU予算から補充するよう提案するか?答えはノーだ」。

  議論の様子を知る関係者によると、ロシアのウクライナ侵攻のさなか、ドイツが防衛力増強の規模拡大や加速方法を議論するより、資金調達の選択肢を前進させるのを阻止したことに、一部の首脳は困惑していたという。白熱した協議の中、ロシアのプーチン大統領またはウクライナのゼレンスキー大統領がその場にいてEUが防衛費を増やすべきかという議論を耳にすることがなくてよかった、とデンマークやポーランドの首相らが発言する場面もあった。非公開の議論のため、関係者が匿名で明かした。

  ショルツ首相は、オランダのルッテ首相と共に、他の選択肢が出尽くす前に、共同債を含めたEUの追加資金支出を検討することに反対している。

  北大西洋条約機構(NATO)の次期事務総長に就任予定のルッテ氏が、防衛費のための資金調達プロセスを遅らせようとするのは衝撃的だとEUのある外交官は話す。だが、オランダ政府は、EUの資金を使う前に、明確なニーズ評価、防衛のための域内市場や調達の改善、民間資本へのアクセスの促進をするべきだとの立場だ。

  欧州委員会のフォンデアライエン委員長は会議後、EUは今後10年間で防衛分野に5000億ユーロ(約86兆円)の追加投資が必要と述べた。

  複数のEU外交官によると、ドイツが反対しても、ロシアのウクライナ侵攻や地政学的リスクの高まりに直面する中、EUの防衛体制や能力をいかに高めるかの議論がなくなることはない。フランスとイタリアは、何らかの共同借り入れを求めるEU加盟国の一部だ。

  首脳会議に先立ち、バルト3国とポーランドの首相は、フォンデアライエン氏とミシェル欧州理事会常任議長(EU大統領)宛ての書簡で「集団防衛の礎であるEUの枠組み内およびNATOと共同で、防衛構想のための支出を増やし、より協力する必要がある。防衛、抑止、市民と領土の保護のため、能力を統合しなければならない」と訴えた。

  防衛資金の調達問題は、次期欧州委員会の任期中にEUが直面する最大の課題のひとつとなる。2期目続投が決まったフォンデアライエン氏は、防衛力強化のための資金調達方法の選択肢に関する報告書を今週中に提出する計画を断念し、代わりに、共同で行える防衛プロジェクトについての最新情報を、口頭で発表した。

原題:Germany Irks EU Leaders by Resisting Joint Defense Funding (2)(抜粋)

--取材協力:Alberto Nardelli.

More stories like this are available on bloomberg.com

©2024 Bloomberg L.P.

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。