「口コミ人気No.1」。自社サイトでこうした広告を掲げる会社に対し、消費者庁が景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして相次いで行政処分を出している。リサーチ会社の調査結果を基にした広告だが、その調査方法に〝欠陥〟が確認されたためだ。ただ、処分されるのは広告を出した会社だけで、リサーチ会社は対象外。消費者庁はリサーチ会社の実態調査を始めたが、専門家は「野放し状態」として法整備の必要性を指摘している。

ずさんな調査

「アフターフォロー満足度No.1」

消費者庁は3月、自社サイトで4つのNo.1を並べていた大阪市内の太陽光発電設備の工事業者に再発防止などの措置命令を出した。

関係者によると、広告の根拠とするアンケートはこの会社の依頼に応じて東京都内のリサーチ会社が実施していたが、複数の問題点があった。

アンケートの対象者はリサーチ会社が運営するサイトの会員で、実際に商品やサービスを利用していなくても回答できた。設問の中で10社のサイトとリンクしていたが、いずれも依頼主の会社を一番上に表示。さらに、回答者には現金や電子マネーに交換できるポイントが付与された。

ポイント目当てに、内容にかかわらず一番上に表示された会社を選択した回答者がいた可能性は否めない。

消費者庁などによると、2~3月、No.1広告を巡り景表法違反で計11社に行政処分を出したが、うち9社は同じリサーチ会社が請け負い、調査結果が1位にならなければ金を返還するとの内容で契約していたケースもあったという。

景表法に詳しい森大輔弁護士(東京弁護士会)は「あたかも実際の利用者にアンケートを実施したかのような表記は消費者を誤認させる。依頼主を一番上に置くのも結果を恣意(しい)的に誘導している疑いがあり、公平な調査とはいえない」と批判する。

リサーチ会社の担当者は「誤解を与える調査だった」と認め、すでにこうした調査をやめたとしている。

業界内部からも批判

マーケティング・リサーチの人材育成や研究に取り組む一般社団法人「日本マーケティング・リサーチ協会」(東京)によると、No.1広告は約7年前から増えてきたというが、小林恵一事務局長は「1位の根拠を示すほどの調査には膨大な予算がかかり、事実上不可能」と問題視する。

同協会は「結論ありきで非公正な調査」と非難する声明を出すとともに、広告を掲出する企業に対しても、消費者がアンケートの詳細を把握できるよう調査内容の開示を求めている。

一連の事態を受け、消費者庁の新井ゆたか長官は3月下旬の会見でNo.1広告の実態調査を行う意向を表明。広告主やリサーチ会社への聞き取りのほか、消費者へのアンケートも実施して今秋にも結果を公表するとしている。

「法改正の検討を」

ネットショッピングの存在感が増す中、消費者を誤解させるようなうたい文句は後を絶たない。そんな中で「結論ありきの調査」が横行する背景には、法の抜け穴がある。

景表法の処分対象となるのは、商品の製造・販売事業者など。No.1広告の場合、広告で自社製品を売ろうとする会社は措置命令を出されたり課徴金を課されたりするが、リサーチ会社はその対象外だ。

森弁護士は「野放しにされてきたため、今回のような景表法違反事例が多発した可能性がある。リサーチ会社に対しても何らかの行政処分を行えるよう法改正を検討するべきではないか」としている。(倉持亮)

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