仮想通貨「ビットコイン」が5日、過去最高値である10万ドル(約1500万円)に到達した。アメリカの次期大統領であるトランプ氏も自身のSNSで祝福。この最高値はトランプ氏が4日、証券取引委員会の次期委員長に仮装通貨の推進派として知られるポール・アトキンス氏を指名すると発表したことを受けてのものだ。
【映像】ついに1500万円超え!ビットコイン、急騰の推移(グラフ)
そんな流れの中、日本では石破茂総理が国会で、仮想通貨推進のための税制改正を求められたものの、丁寧な検討が必要だとして慎重な姿勢を見せた。最近では超投機的な「ミームコイン」も登場し、ビットコインよりも激しく乱高下するものも見られる中、今後の仮想通貨市場はどこへ進むのか。『ABEMA Prime』では専門家を招き、議論を重ねた。
■急騰したビットコイン
この1年だけでも日本円にして2倍以上、値が乱高下したビットコイン。現在は1500万円前後まで上がり、今後さらに上がるかというのが、多くの人の関心事だ。幻冬舎「あたらしい経済」編集長の設楽悠介氏は、「中長期で見ると、僕はまだまだ上がるとは思っている。ビットコインに関しては半減期といって、4年に1回、自動的に発行枚数が減るプログラムがある。それがあったのが今年だ。その半減期から半年から1年、大きく価格を伸ばしていることがある。トランプ氏の推しがあるので、来年就任して、いろいろな政策をやっていくと考えると、まだまだ伸びるんじゃないかと、あくまで投資助言ではなく情報提供だが思っている」と述べた。
中には3000万近くまで行くという声も出ているが「ただその後は、たぶん落ちる。調整されて、もしかしたら1000万を切る、もしくは数百万に戻ってその後また数千万に上がるみたいなことを、繰り返していくのではないか」と予想した。バイナンスジャパン代表の千野剛司氏も「底の値段がどんどん上に上がってきている。一時的な落ち込みに強くなってきているという評価は業界ではある」と補足した。
数年前は、仮想通貨で億単位の利益を得た投資家を意味する「億り人」が話題になった。設楽氏は「仮想通貨はあまり使えるところがないが、今の世界的な見方としては仮想通貨というが、通貨ではなくて資産。デジタルゴールドとビットコインは言われているが、金も延べ棒で使えない。でも持っておくと有事のときに価格が保たれる。要は株と金を持っておくと、自分のポートフォリオのバランスを取れるが、そういうものとしてビットコインは評価されている」と説明した。
また千野氏は「一番のポイントは発行枚数が事前に決まっていて、要は未来永劫ずっと供給され続けるような資産ではない。もうプログラムで決まっているので、これを変えることができない」と述べた。今はどれくらい市場に出ているのか。「9割近く市場に実は出ていて、どんどん発行する枚数が少なくなっていく。一方でアメリカの政府とかあるいは大きな企業とかが最近ビットコインを保有しだしたニュースがあると思うが、そうした方々が購入されていく流れがある中で量自体は決まっている。価格上昇の圧力は強まっていくかなというのは一般的には言われているところだ」と語った。
■仮想通貨のリスクは?
順風満帆に見えるビットコインだが、投資というよりも、よりリスクを伴う投機だと警戒心を強めたのがジャーナリストの佐々木俊尚氏だ。「なんで価格が上がっているのかという理由がない。金と同じで、別に背景に経済活動とか企業活動の裏付けが何もない。例えばマイクロソフトの株が上がるというのは、マイクロソフトが新しい製品を出すか、経営者が優秀だとかそういうのだ。ビットコインは何もない。そういう意味では金とまったく同じ」と、同じく高騰している金と似たものだと指摘した。
また、その中でも金との違いは「金の場合には長い歴史を持っているので安定的に運用されていて、ずっと値上がりはしているが、基本的にはそんなに乱高下はしない。でもビットコインの場合には、乱高下しているのはいわゆる投機筋と言われる、デイトレードでバッとお金を儲けた人が大量に流入しているから。詐欺師まがいの山師の人たちが全員いなくなれば多分、金と同じように安定的に運用される時代が来る可能性はあるだろう」と述べた。
これに設楽氏が「ドルコスト平均法という投資の方法だと、それをやっていた人は完全に勝っている。佐々木さんがおっしゃるように、システムが破綻した時にゼロになるリスクはなくはないが、現状10年前から買っていて、今売ればものすごく投資効率はいい状況」と語ったが、佐々木氏は「金はなぜ価値があるのか誰も分からず、何の裏付けもない。ただ金が貴重だからと全世界の50億人が思っているから価値がある。投機だと納得した上で買う人は構わないが、長期投資のために長期保有として買うような、新NISAと同じ扱いで買うのは、僕はすごく危険なのでやめた方がいい」と警戒心を強めた。
これには千野氏が補足。「おっしゃる通りの面は非常にあると思うが、我々業界のやっぱり課題は価格変動だ。ボラティリティが高いところだと思うが、ボラティリティを小さくしていくには、いろいろな方に市場にお入りいただくのが一番の解決策。要は短期的な動向だけで売買する人たちだけではなくて、中長期的な視点で保有いただけるというような方を増やしていかないと、価格は安定していかない」。
■仮想通貨は法定通貨の代わりになりうるのか
「仮想通貨」と呼ばれるだけに、いずれは一般的な「(法定)通貨」と同様に使えるようになることをイメージ、さらには期待する人もいる。千野氏は「貨幣の話は専門の方がいろいろいらっしゃるが、基本的に今、法定通貨として流通しているものは日本円も含めて裏付けの資産はない。いわゆる不換紙幣というもので、銀行券を持っていっても日銀は金には代えてくれないものなので、ある種人々の信頼で成り立っているというのはビットコインと本質的には同じ」と述べた。
これに佐々木氏は反論。「それは違う。今の不換紙幣は中央銀行がコントロールしている。日本でいえば日銀。その日銀が発行量をコントロールしてそれによって通貨の安定性を保っているわけで、ビットコインはその中央銀行にあたる存在がない。そうすると乱高下してもそれを誰もコントロールできない。だから通貨になり得ない。そこで日本円とか中央銀行が発行する通貨とビットコインが同じとおっしゃるのはかなりミスリード」と語った。
何かと仮想通貨には出遅れている印象がある日本だが、千野氏によれば実は2013〜2014年頃、世界で一番ビットコインを保有していたのは日本だという。そのシェアは50%超。「具体的に言うと円建ての取引が50%ぐらいあったと当時言われていた」が、現在ではわずか数%ほどに落ち込んだ。1つのきっかけは2017年に資金決済法を改正し、暗号資産・仮想通貨を営業するには金融庁への登録が必要になった。「いろいろな投資家を保護するための施策が導入されたということも、1つ要因としてはある」。
また、イメージも悪かった。ハッキング事件が相次ぎ、預けていたものが知らない人に取られてしまうような事件が続出。「かなり否定的な報道がされて、取引を控える方が多くなっていった。その反面、海外では盛り上がりをすごく見せていたというのがあって、今、日本と海外との温度差がかなり出てきた」。
佐々木氏は、この規制や、石破総理の慎重な姿勢を評価した。「投資家保護制度みたいな規制がしっかりしている。あと投資に関しては、企業活動に対して投資するわけで、それが経済活動に寄与し、GDPを増やす、日本全体の経済成長に寄与するところがあるから、税率を抑えている。だがビットコインに回した金は、結局マネーゲームにしかならず、経済活動に寄与するところがあまりない。そうすると、投資とビットコインが同じ税制20%にするのが妥当なのかというのは、石破さんの言っている通りだと思う。やってもいいと思うが、もうちょっと議論を深めないで、トランプがあんなに言っているのに日本だけ遅れているというのは、あまりにも雑な議論かなと思う」と述べていた。
(『ABEMA Prime』より)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。