「気候正義」という言葉をご存じでしょうか。気候変動の要因となる温室効果ガスのほとんどは先進国から出たものです。それにもかかわらず、災害や海面上昇など、生活に大きな影響を受けるのは開発途上国や責任のない将来世代です。こうした不公平さを正していくという意味で、気候正義という言葉が使われるようになりました。

 ところが「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)」の実現に向けた議論に、将来世代が関われていない現実があります。気候変動への若者の関心は高い一方、政策や地域ビジョンを決める場にその姿がないことがほとんどです。なぜでしょうか。

 気候変動問題は気象やエネルギー、環境、経済などと関わりが深く、専門的な知識が必要となります。そのため、実績や経験のない将来世代に議論を任せるのは不安だという方もいるでしょう。エネルギーを専門に事業している私でさえ、経験豊富な先輩方のご意見には気づかされることが多く、勉強不足を感じます。

 ただ、気候変動の影響を受ける若い世代が議論のプロセスや発表の場に決定権を持って参加することはとても重要だと思います。自分事として情報収集し、将来の出来事を予測してアイデアを組み立て、責任を持って実行することは、彼らにしかできないからです。

 昨年、県内のある自治体に、学生が脱炭素へ向けた政策提言を行うサポートをしました。当初こそ知識不足で心もとない内容でしたが、彼ら自身で調査や議論を重ね、斬新で具体性のあるアイデアを考案。実現性を伴った将来施策として自治体へ提言することができました。

 「立場が人を育てる」と言います。若手に責任ある重要な役割を任せるのは大きな勇気がいることです。しかし、役割を与えて責任のある立場を経験させることこそが、その人自身や組織の成長につながります。社会全体がもっと若い世代を信頼し、時には思い切って任せることで、より良い未来作りができると信じています。

 (エネルギーラボ沖縄代表)

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