99年の歴史を持つ東京六大学野球の東京大学と、「戦国東都」と呼ばれる東都大学野球の青山学院大学。。。どちらも大学野球界では特色のあるチームです。

実はこの「東大の主将」と「青山学院の監督」の2人には共通点があります。ともに岡山県内の同じ進学校の出身なんです。

その学校とはどこなのか。そして彼らを生み出した背景には何があるのか?その岡山の母校、そして東京大学硬式野球部【画像①】を取材してきました。

【画像①】

大学野球の聖地・神宮球場。取材したこの日、東京大学が東京六大学野球のリーグ戦で1年ぶりの勝利を挙げました。

早稲田・慶應・明治・法政・立教…名だたる強豪大学を相手に奮闘する、東京大学硬式野球部。その部員120人を率いるキャプテン【画像②】は、実は岡山県の出身です。野球の強豪校の出身ではありません。

【画像②】

(東京大学硬式野球部 藤田峻也 主将)
「高校時代の『限られた時間』で『限られたスペース』で練習するような知識は、今にも生きているよなと思っていて」

「それをどれだけ全員が『自分事』として考えてチームに還元できるかというところを、いま主将としても一番大事にしているところなので、そういう考え方にたどり着けたのは『高校時代のおかげかな』と思います」

【画像③】

その藤田選手の母校とは。。。

母校は県下有数の県立進学校 知事もOB

藤田選手の母校は、岡山県立岡山大安寺中等教育学校です。岡山大安寺高校を母体とし、14年前に6年制に移行した県下有数の進学校です【画像④】。

【画像④】

藤田選手は、大安寺の野球部でエースで4番。野球と勉強を両立して、現役で東京大学理科一類に合格しました。(【画像⑤】は高校時代の藤田選手)

【画像⑤】

卒業生が、あの東大野球部のキャプテンに。倉敷マスカットスタジアムに、母校の応援で訪れたOBたちにとっても誇りです。さらにOB会長は「もう1人」大学野球チームを率いる大安寺の卒業生がいることを教えてくれました。

(野球部OB会 鈴木章弘 会長)
「いま東大のキャプテンの藤田君とか青山学院大学の安藤監督とか、活躍している人はたくさんいます。野球を通して学んだことを、それぞれのところで生かしてもらいたいと思います」

【画像⑥】

そう、東都大学野球の強豪・青山学院大学で、6年の間に1部リーグを4回優勝に導いている安藤寧則監督も、大安寺の出身なのです。

なぜ、進学校の大安寺から、大学野球界を率いる人材が次々に輩出されているのでしょうか?そのヒントとなる「石碑」が、校内に立てられていました。

石碑に刻まれていたのは「五時下校」の文字?!

【画像⑦】

岡山市北区北長瀬本町にある岡山大安寺中等教育学校。その校内の石碑に刻まれていたのは「授業第一」「五時下校」の文字です【画像⑧】。

【画像⑧】

実は大安寺野球部、「強豪」というイメージはありませんが、とは言えこれまで秋の県大会で1回優勝、また夏の県大会でも2度の準優勝という輝かしい成績を残しています。

しかし、どんなに好成績を収めようが、「補習の免除」も「下校時間」の延長もなかったといいます。

(1988年当時の校内放送【画像⑨】)
「5時までには全員、校門を出るようにしましょう」

【画像⑨】

野球部は、今も放課後の2時間の練習を、分刻みで行っています。どんなに制限があろうと、部活動も勉強もやり切る。そして、限られた時間の中で、練習も勉強も工夫を凝らし、持てる最大限の力を発揮する。

その精神は、今の部員たちにもしっかりと受け継がれていました。

【画像⑩】

部訓「二兎追う者は二倍努力せよ」それが “大安寺イズム”

(岡山大安寺中等教育学校硬式野球部 和田泰洋主将)
「試合で出たエラーとか三振とか、そういう課題を練習の一週間の中で調整して次の試合でそれができるようになる、そういう練習をしています」

「『二兎追うものは二倍努力せよ』という部訓があって、野球もやって勉強もやり切るという、『やり切る力』っていうのがものすごくあると思うんで」

【画像⑪】

『何事もあきらめずに最後までやる』っていう『大安寺イズム』があるんじゃないかなと思います」

【画像⑫】

なぜ東大ナインは「大安寺イズム」藤田選手を主将に選んだのか

その大安寺イズムを、東大野球部でも身をもって示している藤田選手。そんな姿を見て、東大野球部の部員たちは、去年藤田選手をキャプテンに選んだといいます。

【画像⑬】

(東京大学野球部 大久保裕監督)
「『常に周りのみんなに目を配って、チームをまとめている』っていう姿勢がすごく4年生の中でも、一番向いてるんじゃないかなと思います」

「野球一途、まあ、勉強もしっかりやるっていうんでしょうけど、グラウンドでは野球一途なところを先輩後輩にもしっかり見せてくれてると思います」

【画像⑭】

一途、そしてぶれない藤田選手の姿勢は、東大野球部の選手たちも一目を置いています。

(東京大学野球部・平田康二郎投手・4年)
「『チームのためを思って行動できてる人だな』っていうのを感じます」

「『勝ち』っていう、僕たちの目標をぶれないようにずっと示し続けてくれてるし、そこに向かって全員で迎えてるっていうのは、昨日の勝ち(慶応戦)にもつながったところがあるかなと思います」

【画像⑮】

そして東大は秋のリーグ戦で「2勝」をあげた

藤田選手は大学でも「野球」と「勉強」に全力。4年生最後の秋のリーグ戦は、実に7年ぶりとなる「チーム2勝」を挙げることが出来ました。

大学卒業後は一般企業に就職する予定の藤田選手。胸の内に生き続ける「大安寺イズム」は、今後の人生にも生きてくると胸を張ります。

【画像⑯】六大学野球のポスターにも藤田主将の姿が!

(東京大学硬式野球部 藤田峻也 主将)
「大安寺の一番いいところは、勉強も野球もちゃんと真面目に、どちらも本気で取り組める環境があることかなという風に思っているので、そういう二つのことにどちらも取り組めるっていう環境はいかにありがたいことかっていうところを思っています」

【画像⑰】

「野球を引退しても、こういった『仲間と何かをやる』っていう経験は絶対に生かせることだと思うので、何か自分が熱中できるものを作ってそれを社会に還元していけるような人間になっていきたいなと思っています」

【画像⑱】

大学野球で花開く大安寺の卒業生たち。彼らの活躍は、多くの後輩たちにも勇気を与え続けています。

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