「今月あまり入れなくてすいません」ー弊社でアルバイトとして働いてくれている大学生がそういって頭を下げた。「今月103万円超えそうで、入る回数減らしているんです。●●さんは103万円超えて親に謝ってました」。「103万円の壁」。10月27日に行われた衆議院議員選挙で公示前の4倍となる28議席を獲得し、政権運営を左右する存在に浮上した国民民主党は、この壁の見直しを公約の一つに掲げている。大学生も頭を悩ます「壁」の現状とその行方は?
手取り額が大きく変わる「年収の壁」
パートやアルバイトをしている人にとって、手取り額が大きく変化する“年収の壁”は主に3つ。
▼一つ目が『103万円の壁』
これを超えると、“所得税の納税義務”が生じる。また子などの年収が103万円を超えると、親の扶養から外れるため扶養控除が適用されなくなり、結果として親が負担する所得税や住民税の負担が増える。自分に税負担が発生する上、親の税負担も重くなる。
▼二つ目が『106万円の壁』
一定条件を満たせば、社会保険に加入して、健康保険や厚生年金などの社会保険料を支払う義務”が生じる。
▼三つ目が『130万円の壁』
これを超えると“社会保険への加入に加えて、配偶者の扶養の範囲からも外れる”。
これらの“壁”があることで、働いた方が手取りが減る可能性があり、「働き控え」が起こっている。これに拍車をかけているのが「最低賃金のアップ」だ。
「気づいたらバイト代増えてた」
消費者物価指数の上昇などを理由に、長崎県の最低賃金は▼2022年には853円、▼2023年には898円、▼2024年10月には953円に引き上げられた。全国平均も、引き上げ額が今年過去最高の51円、改定額は1055円となった。
「気づいたら一気にバイト代が増えていた」ーそう話すのは、飲食店とホテルなど、3つの会社でアルバイトを掛け持ちしている長崎市の女子大学生(20)。親の扶養控除の対象となる年間103万円、月額に換算して約8万6千円を超えないよう、アルバイトの日数を調整しているという。
女子大学生:
「親の扶養から外れることがなければまだ働きたいのに」
時給が上がるのは働く側にとっては嬉しいことだが、これまでより少ない労働時間で“年収の壁”に到達してしまう。
どうなる「103万円の壁」
国民民主党は、最低賃金が1995年と比較して1.73倍になっていることを根拠に、「103万円」の基礎控除額を「178万円」に引き上げるべきだとしている。
「働き控え」を減らし、手取りを増やす政策の一つとして期待が高まる一方、実現した場合の税収減は国と地方で約7兆~8兆円とされている。村上総務大臣は「地方の個人住民税だけで4兆円程度の減収が見込まれる」としており、財政健全化の視点も合わせ、議論の行方が注目される。
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