厚くて硬いことで有名な山梨県大月市の伝統銘菓・厚焼木の実煎餅。

煎餅を焼く28歳の職人は60年間続いた店舗の移転を決めました。
これまでの場所での最後の営業と新店舗のオープンに密着しました。

創業59年大月市にある栄月製菓。

焼き台で手際よく作業するのは店主の吉田紘規さん(28)です。

栄月製菓 店主 吉田紘規さん:
「生地の状態が変わったり火の入り方が違ったり、そこは未だにわからない部分が多いので、日々調整・失敗しながらやっている」

焼いているのは厚くて堅いことが特徴の厚焼木の実煎餅。
明治時代から100年以上続く大月市伝統の銘菓です。

小麦粉、卵、砂糖、それに山椒油を入れ、練った生地を3回繰り返し焼くことで分厚い煎餅が完成します。

実はこの店は…。

吉田紘規さん(20220年取材時):
「どう?緩い?」
清水利治さん(20220年取材時):
「少し柔らかいと思う」

もともと吉田さんの祖父で先代の清水利治さんが営んでいました。

吉田紘規さん(2020年取材):
「無くなってほしくないのが一番で後継ぎになりたいと言った」

しかし弟子入りから1年…。

吉田紘規さん(2021年取材):
「去年11月に祖父が亡くなり、僕がすべてをやるようになった。喪失感は大きかった」

修業の道半ばで師匠でもある祖父が86歳で亡くなったのです。

頼れる祖父がいない中でも日々、試行錯誤を重ねてきた吉田さん。

妻 真衣さん:
「まだできていない」

3年前に結婚し、妻の真衣さんと夫婦二人三脚で店を切り盛りしてきました。

そして思い切った決断をします。

栄月製菓 店主 吉田紘規さん:
「(煎餅を)残していくうえで場所も大事になってきて、移転をして焼いていきたいと思った」

移転先は現在の大月地区からおよそ4.5㎞東、観光客が多い猿橋地区です。

10月20日、およそ60年続いた場所での最後の営業となりました。

客:
「ごめんください」

この日、店には40年以上通い続けている常連客の姿が…。

栄月製菓 店主 吉田紘規さん:
「きょうでお店終わりで」
客:
「ちょうどいい時に来たね」

40年以上通う常連客:
「1週間に1回くらいは買いに来ている。お土産にいいから、評判が良くて。私たちが学生時代からあるから寂しくなる」

ずっと近くで見守り続けた祖母の和己さんも…。

祖母 清水和己さん:
「いなくなるということは私もここで一人になるから寂しい。おじいちゃんが天国で見守ってくれているから一生懸命頑張ってもらいたい」

栄月製菓 店主 吉田紘規さん:
「ここでこうして5年くらいやってきて、いろんな人に応援してもらってうれしかったですし、新しいところでやっていける自信もついたので、寂しい反面、またこれから頑張っていきたい気持ち」

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