いま、世界から注目されているのが長野県産のワインです。
産地のひとつ、東北信地方の千曲川沿いに広がる「千曲川ワインバレー」。
ワイン産業の特性を生かし、発展を続けるエリアの魅力を取材しました。
千曲川流域に広がる「千曲川ワインバレー」。
東北信地方の9つの市町村で構成されます。
その中核を担うのが、東御市。
古畑キャスター:
「県内有数のワインの産地東御市です。この東御市で、最初に作り始めて普及もさせてきたワイナリーにやってきました」
市の郊外にある「ヴィラデストワイナリー」。
およそ12ヘクタールの畑でワイン用ブドウを栽培し、醸造方法にもこだわったワインを作っています。
ヴィラデストワイナリー小西超社長:
「(品種は)ゲヴェルツトラミネール、フランス原産のブドウ。バラのような香りやライチのような香りといわれるワインになりますね。いい状態で熟してきていると思います」
9月・10月は収穫、そして仕込み作業とワイナリーにとっては1年で最も忙しい時期。
収穫作業が終わると、すぐにブドウの果汁を搾っていきます。
小西社長と古畑キャスター:
「これが搾ったばかりのジュース(の状態)」
「すっきりな甘さでおいしい!色もまだ濃いですね」
「これがだんだん発酵して、発酵が終わると透明になる」
絞ったあとに酵母を入れ、2、3週間発酵させ、半年ほど熟成させれば完成です。
小西超社長:
「春から夏にかけて熟成させてビン詰めをします。そこからさらに、ワインというのはビンに詰まってからも熟成しますので、今年作ったワインを5年後10年後、また時を経て楽しめるというのが魅力かなと思っています」
東御のワイン産業の先駆者が、このワイナリーの創設者で、エッセイストとしても知られる玉村豊男(たまむらとよお)さんです。
33年前の1991年に病気療養のため東京から移り住んだことがきっかけでした。
玉村豊男会長:
「眺めのいいとこがいいねということで(土地を)探した結果、ここ一番気に入って。フランス映画みたいなブドウが植えられそうな風景だなと思って」
多くの畑は、かつては背丈を超える雑草が生い茂る場所でした。
玉村豊男会長:
「寒くてブドウなんてできないよとみんなに言われたんですけど、道楽だから構わないだろうと植え始めて、そしたらだんだんいいブドウができるようになって」
東御市がワインブドウの栽培に適している訳。
それが日照時間の長さと雨の少なさ。
そして水はけのよい土壌です。
良質のワインが作れると確信した玉村さん、栽培を始めて10年、勝負に出ました。
玉村豊男会長:
「日本では元々海外から輸入した原料を使って工業的に作っている方が多かった。畑の横に醸造所があるというのが数少なかったので、それをやってみようと思って個人で借金をして」
2003年にヴィラデストワイナリーをオープン。
培ってきたノウハウを生かした独自技術でワイン造りを始めます。
2年後に日本のコンクールで銀賞を受賞。
2007年には県内で初めて、東御市がワイン特区に認定されたことも追い風となります。
玉村豊男会長:
「東御市がワイン特区を取ってそれを機にワイナリーが増えてきた。それまでは個人でワイナリーを建てるケースあまりは無かった。ここを見て、これはできるなと思った人がみんな相談に来るので、このまま放置してはいけないと思って」
玉村さんが力を入れたのが「人材育成」です。
日本初の民間ワインアカデミーを開講。
1年をかけて栽培と醸造、ワイナリーの経営について学べる環境を整えました。
卒業生は延べ300人に上ります。
千曲市のワイナリー「イルフェボー」。
イルフェボー落合良晴社長:
「玉村豊男さんのワインアカデミーという所で1年通わせいただいて、素人の人までわかるような講義をしていただいて」
社長の落合良晴さんも卒業生の1人です。
ワインブドウの栽培で、耕作放棄地を再生させようと、2016年に玉村さんのアカデミーに入校。
2022年に千曲市では初となるワイナリーをオープンさせました。
イルフェボー・落合良晴社長:
「千曲川ワインバレーに関しては、かなり出店率が高いと聞いているし、そう考えるとかなり盛り上がっているのかなと思う」
人材育成の成果もあって2013年に10件だった千曲川ワインバレーのワイナリーは、41件にまで増えました。
古畑キャスター:
「ワインの生産者が増えているだけではありません。ワインを観光資源とした街づくりも進んでいます。そこで使われるのがこちらの貸し切りタクシーです」
その名も「とうみワインタクシー」!
東御市や上田市にある5つのワイナリーなどから好きな場所を巡ることができます。
しかも、お得な試飲クーポン付きです!
まず訪れたワイナリーが、東御市にある「アルカンヴィーニュ」。
年間5万本のワインを生産、個性豊かな味を楽しむことができます。
古畑キャスター:
「このワインクーポンを使って飲めるものは?」
担当者:
「こちらでは500円分飲むことができて、2種テイスティングできます。いつもグラスマークがついている5種類(の準備が)あるので、その中から2種選んでもらうかたち」
おすすめはメルローの赤ワインとシャルドネの白ワイン。
古畑キャスター:
「爽やかな白ワインで美味しいです。柑橘系のようなフレッシュさも感じるし、後味はハチミツのような芳醇さも口の中に残る」
40分ほど滞在し、次のワイナリーへ。
古畑キャスター:
「続いてのワイナリーはこちら、リュードヴァンです。どんなワインがのめるか楽しみです」
カフェレストランが併設された東御市の「リュードヴァン」。
クーポン1枚で好きなワイン2種類を試飲できます。
4年前に始まったワインタクシーの運行。
2023年度の利用者は初年度の3倍ほどに増えました。
信州とうみ観光協会 早川一夫事務局長:
「20年前には無かった産業ですからね。玉村さんが始めてワインができてきて、人を呼び込む6次産業になっていく。ただ収穫だけだったら来ないかもしれないですけど、ここで現地の風景を見て楽しんで飲んでもらう、人が来てそこにお金が落ちていく、素材はいっぱいあるので、いかに都会に繋げていくかということになると思う」
ヴィラデストワイナリー玉村豊男会長:
「地域起こしで個人のワイナリーを作る動きも出てきているんだけど、そういうのを先取りしていて、世界でも珍しい産地なんですよね。農業をベースにしたライフスタイルによって地域が成り立つような所ができてくると、そこの暮らしぶりを他の地域から見にくるし、そこのワインを飲みに来る人も増えるし、農地も生かされてその中でゆるやかな地域コミュニティができるのが理想」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。