10月27日に投開票を迎える衆院選。投票しないと将来痛い目にあうかもしれない“損試算”から、1本9900円の傘に1日12万円の選挙カーまで!選挙にまつわる様々なお金を調査しました。

選挙に行かないと5万円負担が増える!?

「若者世代が投票に行かず、1%投票率が下がると5万5238円損をする」
こう話すのは、1976~2022年の国政選挙を分析した東北大学の吉田教授です。

2021年衆院選の投票率をみると、18歳から49歳の若者世代は、50歳以上の高齢世代より低め。20代は、60代70代の半分程度です。(※出展:総務省)

【若者世代】▼10代⇒43.23%▼20代⇒36.5%▼30代⇒47.13%▼40代⇒55.56%
【高齢世代】▼50代⇒62.96%▼60代⇒71.38%▼70代⇒72.27%▼80代⇒48.51%

東北大学経済学研究科 吉田 浩教授:
高齢者は選挙の重要なお得意様。政府は投票率の高い高齢者を重視するということになる」

吉田教授の試算では、若者世代が投票に行かないと「損をする」ポイントは2つ。
1つは、社会保障費です。

政府は若者世代の<子育て手当>などよりも、“お得意様”である高齢世代の<年金・医療費>などの社会保障費に予算を振り向けるため、【若者世代の投票率が1%下がると、1人当たりの社会保障費が高齢世代より2万1494円低くなる】とのこと。

2つ目は国の借金、国債
足らない予算を、高齢世代も負担増となる「増税」ではなく、将来若者世代が負担を強いられる「国債」でまかなおうとする傾向が強まるといいます。

その結果、【若者世代の投票率が1%下がると、1人当たりの国債発行額が年間で3万3744円増える】とのこと。

選挙に行かないと、若者世代の負担が「社会保障費と国債あわせて5万5238円も増える」計算になるのです。(※投票率1%減・1人当たり)

選挙の出馬にはいくら必要?

街で若者世代に、5万円負担増の話をすると「他人事じゃないので投票に行かなくちゃ」という声や「1票だけじゃ行っても変わらない」など反応は様々。中には「選挙にまつわるお金」のギモンを口にする人も。

20代男性:
「ちょっと選挙に出てみたいなってガチで思ってて。選挙に出るのにいくらかかるんすかね?」

選挙プランナーの松田馨さんによると、【選挙の出馬にかかる費用】は約1300万円

▼供託金(※小選挙区の場合)⇒300万円
▼印刷物⇒250万円
▼ネット対策費⇒200万円
▼人件費⇒150万円
▼事務所開設費⇒150万円
▼選挙カー⇒100万円
▼諸経費⇒100万円
▼選挙用品⇒50万円

中でも重要な役割をはたす選挙カーですが、レンタル代1日12万円という高額にも関わらず、あっという間に予約が埋まる選挙カーがあるんです。

1日12万円でも予約殺到の選挙カー

選挙カーの製造やレンタルをしている『グリーンオート』(神奈川・大井町)では、軽自動車タイプは1日3万円から、ハイエースだと1日8万円です。

そして1日12万円でも即予約が埋まるというのが、7月の都知事選で小池都知事も使用した「ガラス張りの選挙カー」

車体後部が、大きな窓のついた“ガラス張りの部屋”のようになっているので「どの角度からでも中の候補者がしっかりと見えるのが人気の理由」(グリーンオート・若狭侍郎さん)とのこと。
夜でも車内の照明を付ければ候補者の姿をバッチリ見せることができるだけでなく…

THE TIME,マーケティング部 西堀 文部員:
「車内にはしごもあります。中からお立ち台に行けるんですね」

“ガラス張りの部屋”の天井から降りたはしごで、直接屋根の上に行けるので、雨の日でもギリギリまで車内にいることが可能なんです。

候補者御用達「1本9900円」の傘

さらに、候補者に人気のアイテムはもう1つ。

『ホワイトローズ』須藤 宰さん:
「ある議員から、透明で庶民性を出して、丈夫で大きい傘が欲しいと」

その要望に応えて開発されたのが、選挙用ビニール傘「カテール」(9900円)。
顔が見えやすい上、傘に特殊な穴が開いているため風速15メートルまで耐えられるといいます。ちなみに候補者でなくても購入可能です。

AIを使って「選挙費用を節約」

立候補すると1300万円ほどかかると言われる選挙。
しかし最近は、政治と金の問題意識もあり「選挙費用を抑えるのが全国的な流れ」になってるといいます。

例えば7月に行われた東京都知事選。実際に選挙費用を節約したのがAIエンジニアの安野貴博さん(33)です。

お金を節約した選挙戦ながらも15万票を獲得し5位に。この得票数は【都知事選30代候補者】の歴代1位の数字です。

選挙プランナーの松田さんによると、都知事選では5000万円以上を使う陣営もあるとのことですが、安野さんが使ったのは約800万円。

▼供託金⇒300万円
▼AI運用費⇒約200万円
▼ポスター⇒約120万円
▼選挙カー⇒約100万円
▼諸経費⇒100万円
▼選挙用品⇒50万円

費用を節約できた一番の理由は、AIの活用です。YouTubeに公開した「AIあんの」(※現在は終了)では、安野さんのマニフェストを学習したAIが24時間有権者の質問に回答。その数は8600件にものぼり…

都知事選に立候補した安野さん:
「AIあんのと毎日喋ってるうちに、『手伝ってみたくなった』とボランティアに来ていただいた方もいた」

都内1万4000か所の掲示板にポスターを貼る作業も、1000人のボランティアがお手伝い。業者に頼むと1200~1300万円かかる費用を1000万円ぐらい節約できたといいます。

さらにポスター設置場所の地図をAIで作成。ポスターを貼ると色が変わっていくなどゲーム感覚で楽しんでいるボランティアも多かったとのこと。
安野さんは、お金や応援団体がなくても「テクノロジーの活用で当選する人がでるのは時間の問題」と話します。

選挙のプロも最近の傾向について…

選挙プランナー松田さん:
「地盤(応援団体)・看板(知名度)・鞄(資金)がなくても十分戦えるような選挙戦に変わってきてる。自己資金100万円も使わずに当選するケースが、地方議員であればたくさん出ている」

(THE TIME,2024年10月22日放送より)

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