地域のお店が次々と姿を消す中、まだ活躍を続けるお店が存在します。その背景には、地元の人々とのつながりを大切にし、創意工夫を重ねて時代の変化に対応してきた努力があります。この記事では、長崎市にある老舗家電店や伝統工芸の鍛冶工房がいかにして地域に根ざし、未来に向けて生き残ろうとしているのか、その秘訣に迫ります。
【住吉アナウンサー(以下:住)】長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。平家達史NBC論説委員(以下:平)とお伝えします。テーマは「地域のお店の生き残り策」です。
【住】昔ながらのお店が、町の中から減っているのは肌で感じます。
【平】大型量販店の進出やネットショッピングの増加、後継者不足などにより、長年、地域の生活を支えてきた専門店の多くが、今、姿を消しつつあります。
馴染みの店が無くなるのは寂しい限りなのですが、こうした中でも、時流を捉えた方法で生き残りを図ろうと取り組む店もあります。まずはその一例として、長崎市福田地区で営業する唯一の家電専門店をご紹介します。
長崎市福田本町にある家電専門店「安心電気」は、創業41年目の今年(2024年)、大幅な店舗リニューアルに踏み切りました。
電気屋さんで「カフェ」
客が集う場を作ろうと設けたのは、家電に囲まれたカフェスペース。11月からは、店内で最新の美容家電を定額利用できるサービスも始めます。
「安心電気」岡村幹生代表取締役:
「店がだんだん少なくなっていく中で、やっぱりお客さんとの接点活動が1つの大きな武器になってくるんじゃないでしょうかね。自分なりに地域密着で頑張ってきたつもりではあるんですけど」
岡村社長は、これまでにも自ら手掛けた漬物や佃煮、刺身を近所に配ったり、店の前でイベントを開いたりして、地域の人たちとのふれあいを大切にしてきました。その長年の取り組みが常連客の獲得にもつながっています。
客:「もう何十年のお付き合いです。色々電気屋さんありますけど価格的には安いと思うんですけど、アフターが行き届いているから、少し高くてでも『安心電気』にと思って。人柄ですよね。やっぱり。皆も社長に言えば安心っていうことでいいんじゃないですかね」
「需要はある」
大型量販店の進出やインターネットでの購入者の増加、後継者不足など地域の店を取り巻く環境は厳しさを増していますが、岡村社長の思いは、次の世代へと受け継がれています。
「安心電気」岡村諭拓店長:
「なんかお困りごとがあった時にすぐに頼める存在っていうところで、需要があるかな。一番は愛される店になりたいので、色んなお話をしながら、お困りごとを解決したりとか、色んな情報を交換し合うような場所にできたらという風に思っています」
「安心電気」岡村幹生代表取締役:
「今までうちがやってきたお客さんを逃がさないように、そして新たに自分のお客さんを作っていけるようにしていってもらいたい。安心電気に行きたいっていうお客さんが増えてくれば最高じゃないでしょうかね」
【住】店の姿は変わっても、地域の人たちとのつながりは変わらず、それが店の良さとして受け継がれることで、地域になくてはならない店として、経営の安定にもつながっていきそうですね。
【平】大型量販店やネット販売では手が届かないサービスというのはまさに「地域密着」の強みでもあるので、そこに磨きをかける取り組みは、他の店舗の参考にもなるかと思います。
「どこにもない包丁を作る」
長崎市には、この他にも地域の伝統工芸を次世代に残そうと、新たな取り組みを始めた職人がいます。長崎観光の魅力UPにも繋がることが期待されているその取り組みを取材しました。
切れ味と刃の粘り強さが特徴の蚊焼庖丁。江戸時代からの技法がいまも受け継がれていて、県の伝統的工芸品にも指定されています。
長崎市蚊焼町は、かつては30軒ほどの鍛冶屋が軒を連ねていましたが、後継者不足の問題などから、今では、桑原鍛冶工房を含む2軒を残すのみとなっています。
「桑原鍛冶工房」三代目桑原和久社長:
「どこにもない庖丁をつくっています。よく切れるよ、長持ちするよ。握った心地がいいって」
去年、創業100年を迎えた桑原鍛冶工房では、庖丁を作る工程で良質の地下水を使っていて、これが切れ味の良さなどに繋がっていると言います。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。