15日に公示された衆議院選挙では「政治とカネ」や物価高への対応に加え、能登半島地震からの「復旧・復興」が重要な争点となっています。様々な課題を抱える被災地で今、政治に求めるものは何でしょう。現場を取材しました。

元日の能登半島地震で被害が大きかった氷見市姿地区。地震から8か月が経過し、ようやく公費解体が本格化しています。

海岸線では倒壊していた住宅が少しずつ姿を消し、更地が増えてきました。

この日、住み慣れた自宅が解体されるのを見にきた女性は…。

自宅が解体される 富田右子さん「すいません。本当に悲しい。ピアノ弾いたり、鳥たちと遊んだり、海で遊んだり本当にね」

ずっと姿で住み続けるつもりでしたが、11月には姿を出て、氷見市の中心部に引っ越すことになりました。

富田右子さん「向こうがさみしくなって嫌になると思うんですよ。狭くて。自分の大事なお家です。いつまでもずっとお家だと思って」

液状化による段差…今も当時のまま

姿地区の区長を務める山本譲治さん。年内には22軒の建物が公費で解体される予定だといいます。

氷見市姿地区 山本譲治区長
「更地になったところをどうすればいいのか。能登も大事やけど氷見の方にも目を向けてほしい」

能登半島地震は過疎化にあえぐ地方を直撃。姿地区では地震前にいた64世帯のうち4分の1にあたる16世帯が集落を離れました。

過疎化に伴って高齢化も急速に進んでいて、山本区長は地震を機に若い人も減り、集落の存続自体が危なくなっていると危機感を募らせています。

氷見市姿地区 山本譲治区長
「何とかムラをね。姿を無くすわけにはいかんから。(国に)氷見の方にも被害があったということを皆さんに言ってほしい」

高岡市の吉久地区。地震による液状化でできた自宅と道路の段差は、今も当時のままです。

50世帯のうち10世帯以上が離れていった…

傾いた家に住む住民(80代):「やっぱり調子悪いわいね。なかなか慣れんもんやて。お金のないものは直されんやろがいね。り災証明のお金だけでは足らんが…」

暮らしの再建の大きな妨げになっている段差の激しい道路ですが、完全復旧までにあと2年以上はかかる見通しです。

傾いた家に住む住民(80代)
「道路から直さんことには都合悪い。待つしかない」

液状化被害が大きかった高岡市の吉久や伏木、横田地区は、同じ規模の地震が起きると再び液状化する可能性があることが、地盤調査の結果で示されました。しかし、液状化対策の工法もいまだ決まっていません。

懸念していた大雨による被害は出なかったものの、これから迎える雪の季節を前に不安を抱えています。

串岡弘昭さん
「大雪が降ったら除雪をしなければなりません。その除雪をする時の軽ブルドーザーが、この斜めでは非常にやりにくいでしょうし、機械で動かしてくれる人が1人いなくなったということが、とても痛手なんですよね」

一方、吉久地区も住民の転出に歯止めがかかっていません。地震前にいた50世帯のうち、10世帯以上が離れていきました。

70歳を過ぎての再出発に不安が…

池田良一さんも地区を離れることを決めた一人です。自宅が公費解体されることになり、この日、片付けにきました。

地区を離れる決断をした 池田良一さん
「住めない状態やさかい。家の中は。だからもうあきらめですね」

自宅は液状化による地盤沈下で至る所に被害が…。

池田良一さん
「ここも波打ってまったく閉まらない状態、小さい時に親とじいちゃんが立ててここに60年以上住んでたさかい。色んな思い出はありますね」

今は隣地区の借家で妻と娘の3人で暮らしています。

今後、別の場所に自宅を新築する予定ですが、70歳をすぎての再出発に不安がつきません。

池田良一さん
「今行ったところはほとんど小学校の近くやさかい、若い人たちばっかりなんです。年寄りがあんまりおらんような感じで…、また一からね。一からやってかんなん」

能登半島地震から9か月。早期の生活再建に向けた支援を求める多くの被災者の声に政治はどう向き合うのでしょうか。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。