事実上、選挙戦突入。「政局のカリスマ」後藤謙次氏が、すばり裏側を惜しみなく読み解きます。(聞き手:TBSテレビ政治担当解説委員 石塚博久)
骨肉の争い選挙「体3分の2飛び出す」「がなり立てる」「横っ面ビターン」
ーー後藤さんは今まで数知れない選挙取材を振り返って、選挙の戦いぶりで印象に残っている方というのはおられますか?
後藤謙次氏:
一番最初まだ若い頃でしたけども、1983年の田中角栄さんがロッキードで逮捕されて判決が出た田中判決選挙、このとき私は北海道の選挙を担当していて、そこで当時の北海道5区、ここで中川一郎さんの息子の中川昭一さん、それから秘書の鈴木宗男さん、この骨肉の争いの選挙を取材して、このときは帯広ですから12月の選挙ですごく寒いわけです。でも、選挙カーの窓を全開にして体を3分の2ぐらい飛び出すような勢いで双方が、がなり立てる。結果として2人が当選するという非常に激しい選挙。
ーー鈴木宗男さんのお話は、1982年の総裁選のあと1983年に候補だった中川一郎さんが亡くなって、息子さんと秘書だった鈴木宗男さんと、宗男さんは今でも言いますけど人殺し呼ばわりされるわけですよね。僕もその話聞いたことあるんですけど、松山千春さんと2人で辻立ち、松山さんがハンドマイクで「果てしない」と歌を歌い、人が集まると宗男さんが演説をする。あるとき、車が来て「なんか応援かな」と思ったら、いきなり横っ面をビターンと叩いた。これは松山千春さんがよく言うんですけど、そのときに宗男さんは「いや不満があるなら、もう片方のほおも叩け!だけど鈴木宗男をよろしく」と言って握手をした。それだけ選挙というのは激しいですね。
高市氏「宣戦布告」で「党内野党」に
ーー今回の選挙はどうなるのか、まずは自民党内の情勢を見てみると、石破政権、主流派と非主流派にわかれていて、高市さんを中心とした非主流派という形に今なりつつありますけれども、旧安倍派の大半が期待して支持している。今回の衆院選で、高市さんに100件以上の応援依頼が来ている。主流派から見ればこの不穏な勢力、決選投票173票、相当な勢力で、高市さんは総務会長を断って非主流派を選んだ。こちらの動きをどうご覧になりますか。
後藤謙次氏:
これは高市さん、僅差で敗れた悔しさが、なお消化しきれてない。一番驚いたのは、27日に総裁選があって、28日からいよいよ人事工作に石破さんが入るわけです。そのときに真っ先に会ったのが高市さんで、総務会長を要請して幹事長を要求する、これもちょっと筋が通らない。もっと大きかったのはその際に、石破さんによると「これからは党内野党に徹します」と、つまりもう総裁選の翌日からいわば「宣戦布告」をしたというのがあのときの局面なんですね。ですからもう、はなから分裂選挙でもいいというぐらいの気持ちで高市さんがおっしゃっているんですが、これ大いなる矛盾で、それなら党を割って、あるいは新党を作ってやるとか、という筋道を行ってもおかしくはないんですが、結局自民党の公認を求めると、公認が求められないと今度は反旗を翻すと。じゃあその後、自民党公認で当選した後、石破降ろしやるんですかと。
就任から“戦後最短”で解散せざるを得なかった舞台裏
ーー総裁選で岸田さんは早期解散論のレールを引いたというふうに言われてました。
後藤謙次氏:
27日の総裁選の前の24日、この日に岸田・石破の電話会談があって、ここで石破さんは岸田さんの支持を取り付けると、そのときに石破さんは自ら提唱していた「アジア版NATO」と「日米地位協定の改定問題」、これについてはすぐやる課題ではないと、それから「岸田さんの政策の流れを完全に引き継ぎます」ということを約束して、岸田さんが石破さんの支持に流れたと。その岸田さんがとにかく自分が辞めた意味というのは選挙に勝てるということが、辞めた最大の目的だったんだから、そこで負けてもらっては困る、となると岸田さんが描いた最短で選挙をやるという構図は、石破さんはのまざるを得なかったんだと思いますね。
非公認で「1人も取りこぼせないギリギリの選挙に」
ーー衆院の解散時の勢力は、与党290議席で過半数が233ですから、大きく上回っていますが、今回の選挙はどうご覧になっていますか。
後藤謙次氏:
私は非常に厳しいと思いますね。今回258が現職ですけども、このうち12は既に非公認ですから、ここから12を引いた246、この数字に加えてですね今言われているのは比例代表で相当票を減らすと、議席数でいうと11ブロック分、平均1人ずつ、つまり11人減ですから、258から12引く、さらに11引くと、235。それがおそらくスタートライン。ギリギリから始まるという点では1人も取りこぼしができないぐらい厳しい選挙で、当然この後、公明党もどこまで頑張れるか、特に近畿地方は苦戦も伝えられていますので、自公で過半数という目標を掲げておりますが、これもかなり厳しい目標じゃないかなと思いますね。
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