パリパラリンピックでは、熊本県勢も活躍を見せました。今回は、その舞台裏を支えるパラスポーツの施設に注目し、取材しました。
パラスポーツの拠点施設は全国29か所
熊本市の陸上競技場で練習に励むのは、熊本障がい者陸上競技協会に所属する選手たち。
200m・400m・リレー出場 上田湧太選手「200mと400mどちらも1位を取れるように絶対頑張りたいです」
――目標タイムは?
「400mは54秒~53秒でいきたいです」
パリオリンピック・パラリンピックに刺激を受けた選手もいるようです。
100m・200m・リレーに出場 関空選手「パラリンピックに出る夢を持っています」
選手たちを指導する中尾直道(なかお なおみち)さん。10年以上パラアスリートの支援などを続けてきました。
熊本県障害者スポーツ・文化協会 中尾直道さん「1人の人間としてちゃんと見ればいろいろな後遺症があるけど、それは自分の個性だから、それをうまく利用して伸びるようにするれば、時間はかかるけどちゃんとできるようになる」
ただ、県内のパラスポーツには課題もあります。
中尾さん「やっぱり場所がない」
例えば、障害者が優先的に利用でき、パラスポーツの拠点といわれる「障害者スポーツセンター」は、全国に29か所設置されていますが、九州には福岡市と北九州市、鹿児島市の3か所だけで熊本県には設置されていません。
知るきっかけや裾野を広げることに繋がる
パリパラリンピック車イスラグビーで金メダルに輝いた乗松聖矢(のりまつ せいや)選手。平日の練習は県内で1人で行い、週末に福岡の社会人クラブに通っています。
パリパラリンピック車いすラグビー金メダル 乗松聖矢選手「きょうの練習もサポートに入ってもらってトレーニングができているのと、トレーナーも熊本にいるので」
工夫次第で熊本県内でもトレーニングは可能だと話す乗松選手。一方で、施設や環境があれば、パラスポーツを知るきっかけや、裾野を広げることに繋がるのではと考えています。
乗松選手「いろんな体験会だったりとか、公式戦大会をやったり、いろんな幅が広がっていくと思うので、施設や環境があるというのはすごく大事なこと」
その見本となる街があります。
九州に3か所ある施設の一つ『アレアス』
福岡県北九州市にある『アレアス』。九州に3箇所ある障害者スポーツセンターの一つです。民間のスポーツ施設を改修して2012年にオープンしました。
車いすで利用できる体育館では、バスケットボールやラグビーだけではなくアーチェリーもできます。
利用者「一般のジムも行ったが、やっぱり周りが嫌な顔しないけども、ちょっと浮いている空気がある。ここはそういう前提があるので気軽にできる」
北九州市にパラスポーツが根付くきっかけとなったのは、2002年に誘致した車いすバスケットボールの世界選手権でした。
北九州市障害者スポーツセンター 有延忠剛所長「大会が10日間開催されたが10日間で総入場者数が8万人を超えた」
この大会をきっかけに北九州市では毎年世界大会を開催するようになり、現在では車いすバスケの小学生の大会も開かれています。
全員が笑顔で活躍できる
また、北九州市が発祥のパラスポーツもあります。「ふうせんバレーボール」です。
福岡県北九州市出身で筋ジストロフィーを患っていた故・荒川孝一(あらかわ こういち)さんが考案した競技で、鈴が入った風船を使い、チームの6人全員が風船を触ってから、相手のコートに返さなければいけません。
有延所長「(荒川さんは)対等なプレイヤー同士としてみんなが笑顔で活躍できる、そういった機会をふうせんバレーを通じて作りたかった」
参加者「アタッカーが良いアタックを打つにはみんなで工夫したパス回りをしないと打てないので、そういうところが楽しい」
参加者「チームのみんなで楽しく過ごせたら、一番それが目的」
ふうせんバレーボールは全国に広がり、今では海外でも行われています。
北九州市に根付いた車イスバスケとふうせんバレ-ボールは、スポーツを通して子どもたちに相手への理解や思いやりを育む場所にもなっています。
有延所長「場所や機会があって、一緒に使うこと、一緒にいること、そういった時間の流れを継続していくことで、障害のある人 ない人の共生が少しずつ進んでいくと思っています」
様々な人が分け隔てなく生活する共生社会。パラスポーツの拠点は、そのきっかけを作ってくれるかもしれません。
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