9歳の妹・さくらちゃんは、10万人に1人の難病「滑脳症」。さくらちゃんと生きる11歳の姉・心咲ちゃんが作文「家族のきずな」に書いた本音とは…。

村上さくらちゃん、9歳。生まれつき脳のしわが少ない「滑脳症」という10万人に1人の難病を患っていて、身体的、知的に重度の障害があり、話すことも歩くこともできません。

さくらちゃんは、2つ年上で小学6年生の姉・心咲ちゃんと両親の4人で、富山県氷見市で暮らしています。

心咲ちゃん「いつもさっちゃんとママが、一緒におるから、こっちに来てって言っている」

心咲ちゃんが2023年に書いた作文。そこには妹のさくらちゃんを大事に思う気持ちと一緒に、心咲ちゃんの切ない思いがつづられていました。

題名:家族のきずな
「全ての日常生活において介助が必要であるため、妹に父と母がとられる気がしてやだなと思うことがたくさんあった。寝たきりの妹がいて不安や戸惑いや大変なこともたくさんあり、周りと比べて辛くて、悔しくて、ちょっと切ない気持ちになり、唇をぐっとかみしめたくなることもあるけれど、妹は私たち家族にとって大切な存在であり、日ごろからたくさんのことを妹から教えられている」

作文は「とやま県民家庭の日作品コンクール」で富山県知事賞を受賞しました。

作文を見て、父・樹央さんと母・梨詠さんは…。

父・樹央さん「さくらにばかり手がかかるんで、心咲にあんまり目を向けられていないんで」

母・梨詠さん「私とパパ、2人ともいるときはどっちかがどっちかにつこうと決めているんですけど、パパ夜勤でいないことも多くて、どうしてもさっちゃんに手がかかっちゃうので心咲に悪いな、寂しい思いさせているなって」

妹・さくらちゃんは10万人に1人の難病…

さくらちゃんの病気が分かったのは、生後半年の頃でした。

母・梨詠さん「ネットで見たら歩けないしゃべれない。重度の知的障害、短命と書いてあって、どうしようとなりました。夜になったら涙が出て、全然受け入れられなかったです」

9歳になった今も首が座っていません。ご飯を食べるときやトイレの時、生活する上で全てに介助が必要です。でも、姉は…。

姉・心咲ちゃん「うれしい。小さくてかわいかった」

お出かけする際も抱っこや専用のバギーで移動します。その際、周りの目が気になることがあるといいます。

母・梨詠さん「さくらのこと、ジロジロ見てくる人がいるんですよね。立ち止まって見に来たり、わざわざ戻ってきて見たり…、私は、すごく悲しい気持ちになるんですけど、心咲は結構堂々として、そんなときバギーを引いてくれるんです。心強いんです」

“きょうだい児” 国内に660万人と推定…

「ヤングケアラー」は、家族の介護や日常生活の世話を過度に行っていると認められる子どもや若者のことをいいます。国・地方公共団体等が支援に努めるべき対象として、子ども・若者育成支援推進法で定め、国などによる実態調査も進んでいます。

一方で “きょうだい児” は、必ずしも直接的な世話やサポートが発生しないものの、親の役割を手伝ったり、きょうだいの介助を担っていたりする場合があります。

そうした “きょうだい児” は、国内に660万人前後いると推定されています。

しかし、ヤングケアラーとは異なり “きょうだい児” について具体的な調査は行われていないため、実態が掴み切れていないのが現状です。

“本当の思い、本当の希望” 伝えられない…

自身も知的障害がある双子の妹を持ち、きょうだい児についての情報を広く発信している北陸きょうだい会の共同代表を務める金山敦さんは、“きょうだい児”について…

北陸きょうだい会共同代表 金山敦さん
「きょうだい児は、家族の中でものすごく客観的なものの見方、一歩下がった家族像を見てらっしゃる方が実は多いです」

“きょうだい児” であることを肯定的に受け止めている人がいる一方、“きょうだい児” ならではの悩みを抱えている人も多く、その悩みや不安は成長とともに変化すると金山さんは話します。

成長とともに変わる悩み
▼幼少期(幼稚園・小学生の頃)悩み:
障害がある制約で、思ったように外出や外食ができない。きょうだいのケアで忙しい親になかなか甘えられないなど

▼思春期(中・高校生の頃)悩み:
自分の友達に兄弟のことを打ち明けづらい。打ち明けるとその場の空気が変わってしまう心配から家に呼べない。兄弟姉妹のことを「恥ずかしい」「隠したい」と思う自分に罪悪感が出てくる。

こうしな悩みが、大人になるにつれ自分の人生設計についても大きく影響してくるといいます。

北陸きょうだい会共同代表 金山敦さん
「自分が本当に行きたい進路ではなく、将来兄弟の世話をすることがあるかもしれないから福祉介護の方に進もうとか、きょうだいを置いて県外にはいけないなどと “無意識のバイアス” がかかることが未成年のきょうだい児に多くみられます」

また“きょうだい児”は、孤独や辛さを抱え込みやすい傾向があると指摘されています。

北陸きょうだい会共同代表 金山敦さん
「親が悲しんでいる。辛い思いをしてるということも、わかってますし、日々頑張っていることもわかっているので、なかなか自分の本当の思いや希望、やりたいことを親に伝えづらい」

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