10月11日から仙台市内で上映が始まるドキュメンタリー映画「あなたのおみとり」。末期がんを患い自宅で最期を迎えた父親と介護を続け、看取った母親を見つめた映画です。この夫婦の長男で監督を務めた男性が映画に込めた思いを語りました。
小さな部屋から見えてきた「日本の断片」
映画のワンシーン
村上浩康監督:
「もしもし浩康だけど」
村上さんの母 幸子さん:
「今いい?あのね、お父さんね、きのう先生に呼ばれてね、お話してきたんだけどね、もうこれ以上ね治療がないから、もうここにいても、どうしますかっていうお話があったのね。そしたらお父さんうちに帰りたいって」
ドキュメンタリー映画「あなたのおみとり」。末期がんを患い自宅で最期の時を迎えた村上壮(さこう)さん(当時91)とそばで看病を続けた妻・幸子さん(86)の姿を追った映画です。製作したのは、村上さん夫婦の長男で仙台市出身の映画監督・村上浩康さん(58)。これまで「たまねこ、たまびと」など数々のドキュメンタリー作品を手掛けてきました。
村上浩康監督:
「父の介護ベッドが置いてある6畳ひと間の小さな部屋なんですけど、そこから大げさに言えば今の日本の断片が見えてきて、これは映画になるなと思って。そこから息子というより映画監督の視点で撮影に臨むようになった」
「老々介護」日々の現実
映画は、仙台市泉区南光台を舞台に、息子として、そして映画監督として親の姿を見つめた40日あまりの「看取り」の記録です。
映画より
母 幸子さん:
「お父さん大根、おつゆの大根」「(お風呂)気持ちいいでしょ。お父さん、よかったね。涙が出る」「握手しておやすみ。きょうも一日がんばりました」
訪問看護やホームヘルパーの助けを借りながら介護を続ける幸子さん。夫婦の日常には、「老々介護」といった高齢者を取り巻く社会問題も描かれています。
映画より(母 幸子さんが不整脈に)
村上浩康監督:
「大丈夫?お母さん」
母 幸子さん:
「すごい心臓速いの」
村上浩康監督:
「ほんと?救急車よぶかな?」
母と息子、介護でけんかも…
時には、父の介護を巡り幸子さんと村上監督が口論になる場面も。
映画より
村上浩康監督:
「だからそういう風にお母さんが決めつける事じゃないじゃない。売ってるんだから医療用の」
母 幸子さん:
「だって口開かないから」
村上浩康監督:
「飲んでむせるから、むせないようにとろみつけろって言ってるだけ。いつもそうやって拒否するからおかしなことになるんじゃない」
母 幸子さん:
「おかしくならないさ」
身内にしか記録できない日常の姿。母・幸子さんの飾らない言動がありのままに描かれています。
映画より
母 幸子さん:
「(お父さんと)喧嘩して1年くらい口きかないことあった」
村上浩康監督:
「1年!?」
母 幸子さん:
「鷺ケ森のおばあちゃんとか八木山のおばあちゃんきたときは、口きいてたけど、あとは口きかないの」
村上浩康監督:
「(母も)介護をしながら父の悪口も結構いうんですね。そこが結構面白いんですよね。綺麗事じゃなくて夫婦の本音みたいのがすごくぽろぽろ出てきて。そういうところがこの作品をあまり暗くしてない、ポジティブなものにしている」
特殊詐欺の電話もかかってくる…
映画では高齢者を狙った特殊詐欺や迷惑電話などに悩む幸子さんの様子も。
映画より(電話シーン)
村上浩康監督:
「きた?迷惑電話か。でもあれ(留守番電話)やって最近来なくなったって?まえはしょっちゅうきてたの?」
母 幸子さん:
「ひどいとき30分おき」
村上浩康監督:
「なんてくるわけ?」
母 幸子さん:
「『お母さん今いいですか』って」
およそ1時間半の映画。村上監督は大切な「あの人」に見せたかったといいます。
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