長野県内各地に被害をもたらした2019年10月の台風19号災害からまもなく5年になります。
ニュースワイドでは被災地の現状と課題をシリーズでお伝えします。
1回目は災害で一部が孤立状態になった上田市武石地域です。
亀裂が入り激しく波打った道路。
近くの渓流が増水し、アスファルトの下の部分が流されました。
「食料が上に運べないと困っちゃうよね」
上田市街地から車で30分ほどの武石地域。
2019年の台風災害では2つの地区が一時孤立状態になりました。
1つは波打った道路の先のおよそ30世帯の別荘地。
もう1つは地元の幹線道路の一部・武石新橋(たけししんばし)の先にある地区でした。
川の増水で橋が崩落。
1日半でおよそ330ミリという記録的な雨によるものでした。
現場を目撃した近隣住民:
「トラックを運転されてる方の命がどうなのかと思った」
「幸い大したケガじゃなかったようだが、私自身の経験のなかでは初めてこの橋が通行不能になるというのを経験しました」
およそ270世帯・580人ほどが暮らす地区と、上田市街地方面とを結ぶ唯一の道路の寸断。
住民は歩行者用の仮設の橋を使って物資を運びました。
「ガソリンです」
「車や農機具が動かなくなったりすると困る」
当時、孤立した地区に住む金子保(かねこたもつ)さん。
金子さん:
「いままでそういう(災害の)経験がなかったから、武石は」
「あの橋が(落ちたのが)一番の苦痛だったんじゃないかな」
復旧までのおよそ6日間、孤立していない地区の住民が買い出しをして仮設の橋まで届けるなど住民同士の助け合いが自然に生まれたと振り返ります。
金子さん:
「こういう田舎の良さでもあるかもしれないけれど、だいたいここから上の二百何十戸の家(孤立地域)は、かならず下(非孤立地域)に知り合いがあるから頼んだりできる。『何時に(橋まで)行くから買ってきておいて』とか」
1月の能登半島地震で課題となった集落の孤立。
最も多い時で24地区・3300人あまりにのぼりました。
内閣府のまとめでは、県内で災害時に孤立のおそれがある集落は1163か所で、全国最多です。
武石地域では台風19号の経験をふまえ、災害時にドローンを活用しようと取り組んでいます。
上田市武石地域自治センター 下村孝之さん:
「少子高齢化が上田市内で最も進んでいる地域であります。そんな中で武石地域の課題は医療や災害および農業」
「ドローンでどんな対応ができるのか、どんな活用ができるのか」
2022年12月には、薬を運ぶことを想定しドローンを飛ばしました。
台風の時、孤立した地域で薬が足りなくなった住民がいたことから計画。
さらに、被災の状況や、取り残されている人がいないかを把握する実証実験なども行ってきました。
9月の豪雨災害で、100以上の集落が孤立状態に陥った能登半島では、実際にドローンで物資を輸送。
レトルト食品や飲み物などを積み、直線でおよそ2.5キロ先の集落まで運びました。
ただ、被災地でのドローンの活用には課題もあるといいます。
上田市武石地域での実証実験に参加している操縦士の宮島さんは、県外の被災地での活動経験から次のように指摘します。
宮島さん:
「災害が起きた時にドローンを飛ばせる人がその場にいるかということが難しいところ」
「災害は複数で同時多発的に起きますので、一人しかいなければ一つ(一か所)しか対応できない」
そこで、武石地域が目指すのはドローン運航の自動化。
ひとつのカギとなるのがデジタル化された立体地図で、高い建物などを避けて安全な飛行ルートが作成できるほか、将来的にドローンの自動飛行も可能になります。
武石では精密な立体地図の作成が進んでいて、年度内に地域のおよそ8割がカバーできる予定です。
上田市武石地域自治センター 下村孝之さん:
「私たちのようなドローンが使えない人間でもパソコン上で指令を出して飛ばせるという環境が必要ですので、その辺の環境整備が必要になってくると思います」
台風災害から5年。
ドローンなど新しい技術の導入に加えて住民も動き出しました。
住みよい武石をつくる会会長 児玉卓文さん:
「のど元過ぎれば熱さ忘れるじゃないが、だいぶ薄れてきている。あの時の危機感からすれば」
「だから自治センターと私どもが一緒になって防災会議を立ち上げようと」
9月には専門家による講演会を開催。
さらに住民が地域を歩きながら過去の災害や現在のリスクを知る機会を設けることにしています。
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