10月1日にスタートした石破新内閣。解散を巡っての総理の発言修正や、時期が早まったことについて、“裏金問題隠しだ”などと批判が出ている。裏金問題の解明にも期待が寄せられていたが、石破総理自身にも政治資金を巡る疑惑が浮上した。
「約束守れ」“裏金議員”原則公認へ 石破総理の発言修正に批判集中
村瀬健介キャスター
「石破総理が国会に到着しました。解散を表明している石破総理が、所信表明演説に向かいます。政治不信が高まる国民にむけて何を語るのでしょうか」
石破茂 総理
「私はルールを守る、日本を守る、国民を守る、地方を守る」
ヤジ
「ルールを守れ」「約束を守れ」
ヤジで騒然としたのには訳があった。総裁選出馬時には、衆議院の解散時期について…
石破氏(総裁選 出馬表明・8月)
「全閣僚出席型の予算委員会を一通りやって、この政権は何を考えているのか、何を目指そうとしているのか、国民に示せた段階で可能な限り早く信を問いたい」
しかし、総裁になるとすぐに…
石破氏(総裁就任会見・9月30日)
「新政権はできる限り早期に、国民の審判を受けることが重要。10月27日に解散総選挙を行いたい」
さらに、岸田政権を退陣に追い込んだ裏金問題。関与した議員の公認について、こう話していた。
石破氏(総裁選 出馬表明・8月)
「自由民主党として、責任を持って有権者にお願いできるかどうか。そのことは厳正に判断されるべきだ」
しかし、4日の所信表明では…
石破氏(所信表明演説・4日)
「問題を指摘された議員一人ひとりと改めて向き合い、反省を求め、ルールを守る倫理観の確立に全力をあげます」
一定の条件を満たせば、裏金問題に関与した議員も原則公認する方向で、しかも、比例代表との重複立候補まで認めることを検討しているという。
自民党が行ったアンケートによれば、裏金問題への関与があった議員は82名にのぼり、その半数以上が今回の選挙を戦う。
裏金“暴露”元自民議員 無所属で出馬へ「中にいたから自民党の限界も見える」
いわゆる「裏金議員」は早くも、厳しい選挙準備に追われていた。静岡県磐田市の宮澤博行氏の事務所を訪ねた。
村瀬キャスター
「宮澤元議員の事務所ですが、全く看板などもありません」
自民党を離党し、無所属で出馬を表明した元防衛副大臣の宮澤博行氏。地元・静岡で挨拶まわりを始めていた。
宮沢氏は2023年12月、旧安倍派からの指示で約140万円のキックバックがあったことを議員として初めて認めた上、かん口令が敷かれていたことも暴露した。
安倍派・防衛副大臣 宮澤氏(2023年12月・当時)
「しゃべるなしゃべるな、これですよ」
宮澤氏
「大臣、副大臣更迭というのは派閥としてのゲームオーバーですから、もう組織の命令に従う必要はない。組織の正義ではなく、社会の正義にのっとって判断すべきだというふうに私は思った」
宮澤氏は、裏金問題で防衛副大臣を事実上更迭されたあと「心機一転出直したい」と訴えていたが、2024年4月、妻子がいながら別の女性と同居していたことが発覚。自民党を離党し議員を辞職した。
これまで運転手をしていた秘書は離れ、車のハンドルは自らが握る。
宮澤氏
「回る時間がないのよ。この選挙スケジュールは不評です。短すぎる」
支援者から、裏金問題の指摘を受けることもある。
宮澤氏
「140万円がありましたけど、本当に帳簿をつけてなかったのは申し訳ないなと思いますけど」
支援者
「駄目なものは駄目。悪いことしちゃったら私はやりました、それから説明責任を果たしますというふうにして、自分の責任も明確にしていけば、僕はある程度はモヤモヤも晴れると思うんですけども」
宮澤氏
「しっかり謝っているのか、しっかり説明しているのか、国民の皆さんは感性で敏感に感じている。(自民党の)幹部をはじめとして、多くの議員がやることが政治全体の信頼回復に繋がるんじゃないかと私は思います」
石破総理が表明した早期の解散総選挙は、“裏金隠し”だと批判が強い。
ーー自民党に政治改革能力は?
宮澤氏
「残念ながら、ないと思います。自民党の中にいた人間だからこそ、自民党の限界というものも見えるし説明できると思うんですよ。慣例に縛られてしまっている、法制度や官僚に縛られてしまっている、そして長老に縛られてしまっている。それは改革マインドが起きてこない」
ーー今回の選挙は、禊ぎという意味もある?
「選挙自体が禊ぎであり、洗礼であるというふうにも言われますので、今までお詫びをしながら国民の皆さんの声を聞いてきて、それが本当に議員としてふさわしいかどうかは、投票でしか結果が出ませんから、しっかり禊ぎと思って、修行と思って取り組んでいきたいと思います」
「裏金がまかり通る政治じゃいかん」 新人にも有権者から追及
一方、宮澤氏が離党したことで、自民党からは新人の山本裕三氏が出馬を決めた。前任者、宮澤氏などの裏金問題について攻められることもある。
有権者
「裏金をやったということ自体がね、なぜそれを隠すのと思うんだけどね。信じられなかったですよ、本当に」
自民党 新人 山本裕三氏
「これからもっとわかりやすくします」
有権者
「(裏金が)まかり通って当たり前になってしまう政治じゃいかん。自民党も段々こうなってきてしまった、ちょっと修正せにゃいかん」
山本氏
「前任の支部長(宮澤氏)の件も含めて、全部私が支部長として、説明も含めて謝罪も含めて行っていくのが私の責務。とにかく真正面から、しっかり自分の思いを訴えていく、本当にシンプルな戦いになる」
この選挙区で前回勝利した、立憲民主党の小山展弘氏は…
立憲民主党 現職 小山展弘氏
「いわゆる裏金の問題とかですね、そこのとこしっかりけじめをつけて、ちゃんとつまびらかにするってことをまずやって、その上で今後再発防止というところで変える必要があれば、その部分を変えていくってことが大事じゃないかなと思います」
日本維新の会、新人の釜下由佳子氏は…
日本維新の会 新人 釜下由佳子氏
「裏金問題が発覚したときに、パーティー券の購入などそれは廃止するべきだ、国民目線で国民の方をしっかりみて、しがらみにとらわれない政治をしていく」
石破総理にも“政治とカネ”疑惑が浮上 裏金問題の解明は?
10月1日、裏金問題の再調査をするのか問われた石破総理はこう答えていた。
石破総理
「新しい事実が判明をしたとすれば、調査が必要だと認識している。現在そういう状況にあるとは承知をしていない」
しかし、この2日後、石破総理自身にも政治資金をめぐる疑惑が浮上した。その疑惑を刑事告発したのが、神戸学院大学の上脇博之教授だ。
神戸学院大学 上脇博之教授
「(石破氏は)『自分のところは違法はないよ』と、胸を張って答えていたけど、石破氏のグループでも同じように(収入の一部を)書いてなかった」
疑惑の舞台は、石破総理らが代表を務めていた政治団体「水月会」のセミナー。参加費は2万円となっている。
石破氏(「水月会」セミナー・2019年)
「この政策集団のパーティーというのは、いかにして1年の活動資金を集めるかということが目的。それなりの費用はかかるので、皆様方にそれをおすがりすることがある」
上脇氏の告発によると、このセミナーを巡り、政治資金収支報告書に3年間であわせて80万円分収入が少なく記載されている。これが裏金になっていたのではないかという告発だ。
水月会に会費を支払った政治団体Aの2019年の収支報告書。支出の欄には水月会に対し、「セミナー会費」という名目であわせて48万円支払ったことになっている。しかし、2019年の水月会の収支報告書には政治団体Aからの収入は28万円と記載されている。つまり20万円分少ない。
2020年も同じホテルで開催されたセミナーに、政治団体Aは50万円を支払っているのに対し、水月会の収支報告書では20万円少なく記載されている。
2021年に至っては40万円の支払いに対し、水月会には受け取ったことすら書かれていなかった。
上脇教授
「この手口は安倍氏や二階氏のところでも同じように行われていた。同じように裏金を作っているという疑惑が生まれちゃいましたから、本当に裏金問題を調査するのなら、まず自分のところの調査をして、本当に裏金が作られていないかどうかを客観的な資料を出して証明しないと、おそらく自分のところに問題がある中で、他の議員を調べるなんてできない」
石破総理の事務所は取材に対し、「ご指摘を受けたので、直ちに水月会で経理を担当していたものに指示を出し、事実関係を確認させているところです」と回答した。
上脇教授
「選挙で勝ってしまったら禊ぎが済んだということにすると思う。総選挙で乗り切れば、どうにか蓋ができる。この問題は触らないように触らないようにしましょうよということで、『総裁選挙を経て、総選挙に臨めば大丈夫』という」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。