川崎市役所と市議会

 川崎市内の高齢者施設や保育所といった民間の社会福祉施設のうち、445施設が、市の土地を無償で借り受けていることが4日、市議会決算審査特別委員会で明らかになった。三宅隆介議員(無所属)の質問に石渡一城・健康福祉局長が答えた。人口10万人当たりで換算すると、全国20政令市の平均の8倍以上で、突出していることが明らかになった。(北條香子)

◆60年以上無償で貸している事例も

 川崎市から無償で土地を借り受けている445施設の内訳は、高齢者施設など214、保育所や児童養護施設など127、障害者施設など103、生活保護法に基づく救護施設1だった。中には60施設を無償で借り受けた土地で運営している法人もあった。土地の貸し付けが1960年から始まっていた施設もあり、この間、ただで土地を使用していることになる。  三宅議員は全国の19政令市を調査したとして「川崎市だけが異様なほど突出している」と指摘。人口10万人当たりの施設数で比較したところ、川崎市が28.8施設で、平均の3.5施設の8.2倍だった。6.5施設で2番目だった仙台市と比べても4倍以上になっていた。

◆「無償貸与も市職員の再就職も当たり前」だった?

 三宅議員は20市の平均値3.5施設を上回る川崎、仙台、新潟、横浜の4市の共通点として「かつて『革新市政』を長年経験している」と分析。「川崎市では、市有地で福祉施設を運営する場合は『無償貸与は当たり前、大勢の市職員の再就職も当たり前』という持ちつ持たれつの構造が常態化していったのではないか」と指摘した。  石渡健康福祉局長は「高齢化の進展や待機児童の増加に対し、特別養護老人ホーム(特養)や保育所などの設置を進めるため」とこれまでの背景を説明した。一方で「自ら土地を取得して事業を運営している法人との公平性などに課題が生じている」と認め、適正な在り方を検討するとした。 

◆「他都市との違いを認識した。公平性を踏まえて検証する」と市長

 福田紀彦市長は「こういった福祉事業への市有地の無償貸与は普通に行われていたと理解していたが、他都市の事例を見て違いを認識した。公平性を踏まえてしっかり検証し、対応していく」と話した。  市議会6月定例会では、前理事長(67)による巨額の私的流用が明らかになった「母子育成会」(川崎市川崎区)に対して、市が長年、市有地を無償貸し付けしていることが判明。市側は答弁で、他の法人に対する無償での貸し付けも調査するとしていた。  三宅議員は「母子育成会のケースは氷山の一角で、もっと巧妙に目立たず甘い汁を吸っている法人がいくつもあるのかもしれない」と述べ、全体的な検証を求めた。 

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