能登半島地震の被災地を襲った豪雨の被害の全容がいまだつかめていない一因として、地震による住宅倒壊などで住民たちが避難して無人となった地域があることがある。辛うじて通行できていた道が豪雨の影響で閉ざされたため、住民は被害確認のために徒歩で入ったが、土砂崩れや河川の氾濫によって追い打ちをかけられた様子に衝撃を受けている。(奥田哲平)

豪雨の被害状況を確認する新谷利彦区長。渋田川が土砂でふさがれ、市道が川のようになった=3日、石川県輪島市渋田町で(奥田哲平撮影)

◆9月からようやく公費解体始まったばかり

 石川県輪島市東部の南志見地区にある渋田町に3日、新谷利彦区長(66)とともに山道を越えて入った。地区につながる県道は途中で土砂崩れに埋まり、集落内の市道も2カ所が滑落。渋田川が氾濫し、周辺家屋に土砂が流れ込んでいる。新谷区長が「どうすればいいんでしょうね」とため息をつく。  約20軒の大半が元日の地震で全壊となった。住民は金沢市に集団避難し、現在は地区の近くにある仮設住宅か2次避難先で暮らす。9月からようやく地区内で公費解体前の業者との立ち会いが始まり、1軒で解体に着手したばかりだったが、その重機も土砂に埋まった。  「道路が直るのがいつになるか分からないし、川底の深さが半分になり、またあふれる心配がある」と新谷区長。別の住民男性(60)も「地震だけなら何とか住める地域になるかと思ったが、『早く諦めろ』と言われているみたいだ」と嘆いた。13日には臨時の住民集会を開き、それぞれの思いを話す場を設ける。

◆「何としても林道を開けてもらいたい」

 土砂崩れの恐れがあるとして集落全体が「長期避難世帯」に認定されている輪島市町野町の寺山地区。県道や市道は通行止めのままで、住民は3月から通れるようになった林道で自宅の片付けなどに通っていた。だが、豪雨により土砂でふさがれた。先月29日に住民10人が1時間ほどかけて歩いてたどり着いた。  地区の大区長を務める高野皓さん(79)によると、約30軒の住宅のうち、2軒が土砂に流され、1軒で倒木が貫く被害が確認された。高野さんは「何としても林道を開けてもらいたい。冬物の衣類を持ち出したいし、冬囲いをしないと家を傷めてしまう」として訴える。寺山地区も13日に住民集会を開くという。  県が公表する豪雨の被害状況(1日時点)では、輪島市と珠洲市、能登町の住宅被害はいまだに「調査中」となっている。 

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