山形県に大雨特別警報が出された夜、2人の警察官が命を落とした。

その時現場では何が起こっていたのか…。

大雨の夜から2か月余り、当時の調査を続けてきた山形県警が新たな情報を公開した。

それを含め、当時の状況を振り返る。

7月25日、記録的な大雨となった山形県新庄市で、救助に向かっていたパトカーが流され警察官2人が死亡した。

逆さまになったパトカーは2人が乗っていた車両だ。



殉職したのは、新庄警察署の玉谷凌太(たまやりょうた)警部補(巡査長から2階級昇任)26歳と新庄警察署の佐藤颯哉(さとうそうや)警部(巡査部長から2階級昇任)29歳だ。

玉谷警部補は新庄警察署の真室川駐在所に、佐藤警部は新庄警察署の交通課に勤務していた。

■経験のない大雨


7月25日、山形県の新庄市にある新庄警察署では署長が「交通事故に気を付けて無理のない活動をするように」と署員に指示を出していた。

この日の山形県内は記録的な大雨に襲われていた。午前中から降り続く大雨はいたるところで道路を冠水させ、住宅など建物も浸水させていく。

こうした中、警察官は活動を続けていた。

午後11時23分、警察本部に1本の110番通報が入る。

一般の人からの救助要請だった。

通報内容は無線で現場の警察官にも共有されていく。

救助要請が出されたのは新庄市の本合海地区。水田地帯だった。



そしてそこからおよそ2キロの距離にいたのが、佐藤警部と玉谷警部補だった。

2人は交通規制をしていたその場所からパトカーに乗り、サイレンを鳴らしながら現場に向かう。

現場は、浸水が想定される地域。

応援の他、警察の規定にはなかったがライフジャケットが必要だと考え、署はライフジャケットを積んだ機動隊の車を現場に向かわせた。

そしてさらに、消防にもレスキュー救助の要請を出した。

■パトカーは浸水域へ…



午後11時33分頃、2人の乗ったパトカーは道路が冠水したエリアに到着した。

夜、激しい雨であたりを確認するのは極めて難しい状況であったことが推測される。



そして、ここから一気に状況は悪化していく。

現場到着から3分後の午後11時36分頃。

2人の乗るパトカーから署に無線連絡が入る。

内容は「現場に到着したこと」「救助が必要な車を確認したこと」そして…「パトカーが川に入っていること」だった。

無線連絡で使われた「川」という表現は実際には正しくなく、「冠水した道路」だったことがその後のドライブレコーダーの解析で分かっている。

無線を聞いた署員は川には入らないよう指示を出したが、この時、すでに2人はパトカーを冠水した道路から脱出させようと、バックで移動を始めていた。

この時の水深は約80センチ。成人男性であれば、腰の下ほどの水が押し寄せていた。

そして…パトカーが流され始めた…。

■「パトカーごと流されている」ノイズ混じりの45秒間の通話


パトカーが流され始めてから5分後の午後11時43分。

玉谷警部補から110番通報が入った。

「パトカーごと流されている」

周りの音が大きく、聞き取れたのはこの言葉だけ。



45秒ほどの通話時間は、通報を受けた通信指令課の担当者の呼びかけのほうが多いほどだったという。

■仲間たちを阻んだ自然

このころ、現場付近には多数の警察車両が向かっていた。

しかし、そこに自然が立ちふさがった。

110番通報から4分後の午後11時43分頃、仲間のパトカーの1台が現場付近に迫るも、土砂崩れで道がふさがれ先に進めないことが判明する。2人の乗るパトカーまで1キロ弱の距離だった。

その9分後にはライフジャケットを積んだ機動隊の車両が現場付近につくが、こちらも土砂崩れで道がふさがれ到達できなかった。

さらに日付が変わった26日午前0時頃、この現場に向かっていた別のパトカーが土砂崩れに巻き込まれる事態も発生した。

2人のパトカーまでたった数百メートルの距離が、縮まらない。

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