目指せ、「最大」の盆踊り―。中野区で、一斉に踊る参加人数の多さでギネス世界記録に挑戦する盆踊り(区観光協会主催)が9月28日に行われた。昨年は記録に6人足りずに涙をのみ、今回リベンジを期した。結果はまたもや及ばなかったが、踊り手の顔には充実感がみなぎり、夏の余韻が残る中野の夜を熱気が包んだ。

◆挑む記録は2017年、大阪・八尾市の河内音頭で2872人

 会場は、中野駅の北西にある中野四季の森公園北側の通り。浴衣か甚平を着て草履かげたをはき、東京音頭を正しく踊れるか。本番は5分間一本勝負だ。  これまでの記録は、2017年に大阪府八尾市で河内音頭を踊って達成した2872人。中野では昨年初挑戦し、参加人数は上回ったが、一部が正しく踊れていなかったり、履物が違ったりしたためカウントされず、更新はならなかった。  今年は人数に加え、50カ国以上という参加者の国籍の多さでも記録に挑んだ。

◆5分一本勝負、子ども、外国人、中野を離れる人も…

ギネス記録の更新を目指して東京音頭を踊る参加者たち

 午後6時半前にいざ本番。「花の都の真ん中で サテ」「ヤートナ ソレ ヨイヨイヨイ」。軽快なリズムに合わせ、伸ばした手がぴたりとそろう。色とりどりの浴衣や甚平を着た踊り手たちが道を埋め尽くし、整然と踊る様は圧巻だった。  友人に誘われて参加したインド出身の会社員サンディープ・エラさん(30)=港区=は初めての盆踊り。「上手だとほめられたよ。死者を弔うという文化的背景を知れたのも良かった」と喜んだ。中野区のミュージシャン、矢野マイケルさん(45)は父が日本人、母はガーナ出身で、「アフリカの踊りはリズムが激しいけど、盆踊りはゆったり穏やかな気持ちになる。動きは忍耐強さも必要で、日本人の心が表れていると思う」と話した。  特別な思い入れのある人も。会社員谷村一彦さん(54)は14年間住んだ中野区から他区に引っ越す。「中野への最後のご奉公。楽しくていい思い出になった」。子どもたちの姿もあり、区内から家族で参加した小学3年の下條英彦さん(9)は「人が多くてびっくりした。うまく踊れたと思う」と笑顔で話した。

◆本番から2時間後、運命の結果発表に参加者は…

ギネス世界記録の更新ならず、落胆の声を上げる参加者たち

 実行委員長を務めたのは日本民踊「鳳蝶(あげは)流」家元師範の鳳蝶美成(びじょう)さん(42)。夏の名物イベント「中野駅前大盆踊り大会」の仕掛け人だ。新型コロナの流行を受け、「祭りもない中で中野のまちが元気になる起爆剤になれば」とギネス挑戦を発案。22年はコロナの感染拡大で中止となったが、昨年初開催にこぎ着けた。  本番から約2時間後、鳳蝶さんや酒井直人区長が見守る中、ギネス世界記録の公式認定員、桐村和由(かずよし)さんが記録を読み上げる。参加人数は2453人、国籍は26カ国―。人数はスタッフが目視で確認したという。  「えー!」。悲鳴が上がったがその後に拍手がわき、「もう一回!もう一回!」のコールも起こった。近所の人たちと昨年に続いて参加した同区の会社員鈴木明子さん(46)は「残念だけどみんなで浴衣を着る機会になる。来年またあったらうれしい」と話した。

◆実行委員長ぼうぜん「今は何も考えられない…」

「やり切った」と語った実行委員長の鳳蝶美成さん

 実行委によると、数日前まで雨予報だったためか、事前登録していた団体にキャンセルが相次いだことも結果に影響したという。鳳蝶さんは「やり切った。今は何も考えられない」と放心状態だった。  記録更新はならなかったが、これだけ大勢の人たちが心を一つに踊ったのは確か。三度目の正直はあるのか、今後に注目したい。

浴衣や甚平を着た参加者が通りを埋め尽くした=中野区で

 ◆文・浜崎陽介/写真・安江実  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。 

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