パナソニックが蛍光灯の生産を2027年9月までに終了すると発表した。家庭の食卓や地下道を明るく照らしてきた蛍光灯だが、水銀を規制する国際的な措置への対応を迫られた。蛍光灯は国内に約7億台あるとされるが、いずれは発光ダイオード(LED)照明へと置き換わる。どう備えればよいだろうか。(山田雄之)

◆水銀を含む蛍光灯の輸入・製造は2027年末で禁止

 「蛍光灯、終焉(しゅうえん)が近づいてますね」「うちのアパートの照明どうしよう」「長年にわたり照らしてくれて、感謝のひと言ですね」。市場シェアの6割を持つパナソニックが蛍光灯の生産を終了するとした発表から一夜明けた2日、交流サイト(SNS)にはさまざまな思いがあふれた。

オフィスの照明。かつては蛍光灯だったが、省電力のLEDランプへの置き換わりが進んでいる。

 パナソニックは蛍光灯の販売を1951年に開始。最盛期の1990年代後半には年間1億本超を生産していたが、2010年ごろからは省エネ性能の高いLED照明への切り替えを提案し、2019年3月末に蛍光ランプを取り付ける照明器具の生産を終えた。ランプの品ぞろえも徐々に減らし、2023年度の生産数は約3000万本にとどまっていた。  同社は天井埋め込み照明などに使われるコンパクト形は2026年9月、直管形とシーリングライトなどの丸形は2027年9月までにそれぞれ生産を終える。国内では東芝ライテック、ホタルクスの大手2社も今後、生産を取りやめる予定という。  生産終了の背景には、水俣病の原因となった水銀を包括的に規制する国際ルール「水銀に関する水俣条約」がある。2023年11月の締約国会議で、水銀を含む直管形と丸形の蛍光灯の製造と輸入を2027年末で禁止することに合意。電球形蛍光灯は2025年末での製造・輸出禁止が既に決まっており、全ての一般照明用蛍光灯が対象となった。

◆LEDの普及は進んだが、まだまだ多い「蛍光灯」

 パナソニックは70年余りの生産の歴史に幕を下ろすが、社会ではまだまだ蛍光灯が利用されている。  一般社団法人「日本照明工業会」の20年度の調査によれば、国内に約18.1億台と推定される照明器具のうち約7億台は蛍光灯という。LED照明の比率は約6割だが、用途別には防犯灯が70%と高い一方で、住宅は47%、学校は32%と普及に差がある。  「LEDは長持ちすると聞くけれど、価格が高い印象があった」。居間や寝室、廊下など自宅にある照明器具はほぼ蛍光灯という東京都葛飾区のパート女性(64)はLED化を避けていた理由を「こちら特報部」に話す。パナソニックの生産終了の発表もあり、切り替えの検討を始めたという。

◆その照明器具、劣化していませんか?

 2028年以降も在庫品などの使用は継続できるものの、今後、家庭で蛍光灯をLED照明に切り替える際にはどんな注意が必要か。  日本照明工業会はランプだけでなく、取り付ける照明器具も含めて「まるごと」の交換を勧めている。担当者は「蛍光灯の照明器具にそのままLEDランプを使用した際、長年の継続使用による劣化や、新たに取り付けたランプとの不具合が原因とみられる火や煙が出る事故も発生している」と話す。  ランプをただ交換するだけでは危険な場合もありそうだ。愛知県大口町の電気店「あんしん電気さかい」の酒井央員社長(51)も、自身のユーチューブチャンネルで注意事項を紹介している。「蛍光灯からLEDへのランプ交換は、サイズが同じものなら取り付けはできるが、落下などの事故も起きる恐れがある。照明器具の改造や交換など切り替えの方法や費用も含め、分からないことがあったら、身近な電気店に相談してほしい」と呼びかける。 

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