自民党富山県連が党員の自覚がない男性の自宅などに総裁選の投票用紙を発送していた問題で、同じように用紙が届いた人が新たに31人いたことが男性の証言でわかりました。架空の家族にあてたとみられるものも含めた投票用紙は77人分に上ります。地方政治に詳しい専門家は「議員に名前を使われた可能性が高い」と指摘します。

自民党の新総裁に選ばれた石破茂氏。決選投票では、各都道府県に割り振られる地方票47票のうち26票を獲得しました。

自民党富山県連 鹿熊正一副会長
「富山県の1票は石破さんが富山県の1票となったと」

この地方票は党員・党友の得票数が多かった候補者が獲得するものです。総裁選の行方を左右するこの党員票を巡り、いま富山県内では不可解な事態が起きています。

「自民党員でもないのになぜ?」

自民党富山県連が発送した総裁選の投票用紙。党員になった覚えがないという人の自宅や会社に届き、名字だけが同じで下の名前に見覚えがない、架空の家族あてにも送られていました。その数は46人分に上ります。

さらに、投票用紙が届いた富山市内の男性によりますと知り合い5人の自宅にも同じように用紙が届いていたことが30日、新たに判明しました。

5人それぞれ、架空の家族名義でも用紙が届き、その数は合わせて31人分に上ったということです。

これで、不可解な投票用紙は77人分となりました。

届いたのはすべて富山市内で、誰一人として党員の自覚はないということです。

地方政治に詳しい専門家は、党勢拡大のため、議員が名前を使った可能性があると指摘します。

東北大学大学院 河村和徳 准教授
「党員を増やしたいという国会議員の方からですね、ないしは地方議員の方からですね、勝手に名前を使われたという可能性は高いと言えるかと思いますし、じゃあお金(党費)どうするのかというと、やはりですね裏金だとか、別のお金かもしれませんが、どこかでお金が建て替えられて党員として登録されている」

事実の確認が現状ではできない…

自民党員の党費は年4000円。投票用紙が送られた男性とその知人は一度も党費を支払っていないということです。

自民党富山県連によりますと、党員になるにはそれぞれの市町村の支部に新規入党申込書を出す必要があり、第一選挙区など選挙区ごとの党員名簿を県連に提出。県連は名簿をデータ化して党本部に情報を上げるということです。

自民党富山県連 宮本光明 幹事長
「県連の立場とすると、どこの町や村に何人の党員がいるかということは把握できますけども、どのような顔の方が党員になっておられるかということは実は把握できない。党員として党費をいただいて上がってきている名簿の中で投票用紙を発送していると。ここまでしか私どもとしたら事実の確認が現状ではできない」

総裁選で “票の水増し” に利用される可能性

自民党県連はことし、党勢拡大で最も優秀な成績を収めた都道府県連として党本部から表彰を受けています。

河村准教授は、身に覚えのない人が党員となることで党勢拡大を目指す議員の存在感を示す材料や総裁選で票の水増しに利用される可能性があると警鐘を鳴らします。

東北大学大学院 河村和徳 准教授
「最初の名簿を作る。すなわち党員であるという確認の段階のところで、本人に党員となる意思があるのかちゃんと確認を取ってないってところにひとつ問題があるのかもしれませんね。今回富山の例ですけど古くから自民党総裁選ではそういうことがあるんじゃないかというのは言われてきたわけですから。そうしたものののひとつが、氷山の一角かもしれませんけれどもこういう形で可視化されたと言えるかなと思いますね」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。