ベランダ菜園の人気が高まっていますが、集合住宅などでは土の処分に困った経験がある人も多いかもしれません。土は一般ゴミとして処分できないためです。自身でも長年悩んだ末、問題の解決に向けて起業した女性を取材しました。

春の園芸シーズンを迎え、マンションやアパートのベランダで花や野菜を育てる人も少なくありません。観賞や収穫と一通り楽しんだあと、意外と悩まされるのが土の処理問題です。

井口キャスター:
「大分市のゴミの出し方のルールが掲載された分別辞典。これを見ますと土はゴミステーションに出すことができないとなっています」

大分市ごみ分別辞典

大分市をはじめとする多くの自治体では土は回収ごみの対象となっていません。

井口キャスター:
「プランターの土、少量なんですけれどゴミステーションに出すことはできますか?」

大分市ごみ減量推進課 髙井慎二さん:
「問い合わせいただくが少量であってもゴミステーションへの排出はできません」

大分市では、土は可燃ゴミでも不燃ゴミでもないという扱いで、処分するには埋め立て場に直接持って行くか、有料収集を依頼するしかありません。

大分市のウェブデザイナー中原ひとみさんは、マンション暮らしで土の処分に困った経験から問題の解決に向けて起業しました。

アップソイルカンパニー 中原ひとみさん

アップソイルカンパニー 中原ひとみさん:
「実家もマンションだったので土を持って行く先が本当になくてサービスとして世の中に必要なものだろうなって思いながらずっと7年間悩んでいました」

土の循環システムを考案し起業した中原さん。家庭から不要な土を回収し、土壌改良材や肥料を混ぜて再び園芸用の土としてリサイクルする仕組みです。虫や雑草の除去のため通常ボイラーを使用する土の消毒には別府の温泉熱を利用。エコな製法もこだわりの一つです。

アップソイルカンパニー 中原ひとみさん:

「やっと商品ができあがるというところまでたどり着けた。誰がやっても本当によく育つという土になっていると思う」

土壌の専門家と共同で開発した中原さんの循環培養土。通常の培養土と比較しても植物の成長に遜色はありません。

大分市に住む田中さん親子は、中原さんの開発した商品でベランダ菜園を始めました。

田中美久さん:
「処分に困っている土があったので、それをどうしようかといろいろ調べたら、リサイクルの土でできるということだったので」

野菜が嫌いという2歳の娘の食育のためにベランダ菜園を始めた田中さん。古くなった土に混ぜて栄養分を加える「再生材」を使い、野菜を育てています。

田中美久さん:
「興味が出るみたいで一口は食べてくれます。自分の育てた野菜を少しでも食べてもらえたらうれしい」

ビジネスの鍵となる家庭からの土の回収方法について、中原さんは試行錯誤しています。現在は、大分市中心部のセレクトショップなどに回収ボックスを設置し、土の提供を呼びかけています。

(回収ボックス設置店関係者)「店の近辺はマンションに住まれている方が多いのでSNSで発信したらすぐ連絡があって需要はすごくあるんだなって思いました」

長年の困りから誕生した循環培養土。回収や製造に手間がかかるため、価格は割高ですが、中原さんの思いへの共感が少しずつ広がっています。

中原ひとみさん

アップソイルカンパニー 中原ひとみさん:
「本当に心の底から気持ちよく園芸ができるような商品やサービスを提供していきたいと思っているので、たくさんの人が土に目をむけて土の未来を考えていく文化を作っていきたい」

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