自民党の新総裁が石破茂元幹事長に決まり、10月1日にも首相に選出される見通し。物価高など仕事や暮らしに直結する問題の解決、若い世代が希望を持てる社会の実現など、人々が直面する課題にきちんと向き合うのか。新しいリーダーに何を求めるか、市民に尋ねた。

上段左から近藤敬子さん、冨永照子さん、浜崎希歩さん下段左は記者会見する自民党の石破茂新総裁

◆「PFAS汚染、政府として問題だと捉えて」

3人の子育てをする、パートの近藤敬子さん=44歳、東京都国立市
 発がん性の疑いがある有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が水道水源から検出された東京・多摩地域に住む。「政府として、問題だと捉えるところから始めてほしい」と語る。  国立市内で小中学生3人の子を育てる。水道水にPFASが含まれていたことを知ってから「子どもの将来に影響はないか」という不安に駆られている。「不安に思っている人のためにも、子どもも含めた血液検査を」と訴える。  PFASは米軍施設の関連が疑われる一方で、日米地位協定がハードルとなって汚染源特定などが進まないことが指摘されている。協定見直しに言及している石破氏が新総裁になったことに「もちろん地位協定という壁はあると思うけど、根本には米国に弱腰な外交姿勢があるのでは。対等な関係で交渉し、私たちの安全を守ってほしい」と求めた。(松島京太)

◆観光地「高級店には日本人が行けなくなった」

浅草でそば店を経営する、冨永照子さん=87歳、東京都台東区  東京・浅草でそば店を営む。円安が進み、インバウンド(訪日客)が激増した。「観光地は楽しくなきゃ。外国の人が来てくれて、にぎわうのはありがたいけど、オーバーツーリズム(観光公害)も困る」とため息をつく。  外国人への人気次第で、全ての店がはやっているわけでもない。物価高で「高級店には日本人が行けなくなった」とも。てんぷらを揚げるごま油は、円安などで5回も値上がりした。高級なメニューを用意すると、注文するのは外国人観光客ばかり。人通りが増えれば公衆トイレが足りない、ポイ捨てが増える—。

記者会見する自民党の石破茂新総裁=27日、東京・永田町の自民党本部で

 円安に良いイメージがない。総裁選後、円高方向に急速に進み、少し明るい気持ちになった。「石破さんは勉強家だし、バランス感覚も良い。誠意と真心を持ってやってくれるはず」と期待した。(鈴木里奈)

◆「若い世代が希望を持ち、夢を追求できる社会に」

起業に挑むZ世代の大学1年生、浜崎希歩(のあ)さん=18歳、東京都板橋区  大学に通いながら、若者のニーズを調べて企業に提供する事業を手がけている。いわゆる「Z世代」と社会をつなげる活動をしているからこそ、新しいリーダーには「若い世代が希望を持ち、夢を追求できる社会にしてほしい」と願う。

自民党本部で行われた総裁選=27日、東京・永田町で

 起業に挑み「何をやるにしても壁を感じることがある」という。事業を起こすには元手がいるが、学生の立場で資金を用意するのは難しい。学びながらアルバイトをしても、物価高で生活費がかさみ、お金がたまらない。「やりたいことがあってもやれない苦しさは、自分だけでなく、みんなが感じている」  新総裁に選ばれた石破氏には「派閥の論理にとらわれず、現状を刷新してくれそうなイメージはある」と期待している。近く見込まれる衆院選に向け、その政治姿勢をじっくり見極めるつもりだ。(佐藤航) 

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