1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)であった一家4人強盗殺人事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審判決公判で、静岡地裁(国井恒志裁判長)は26日、無罪を言い渡した。戦後、再審公判が開かれた死刑事件の無罪判決は1989年の島田事件に続き5件目。袴田さんは死刑確定から再審無罪まで44年かかっており、5件のうちで最長。 【関連記事】幻覚、妄想…袴田さんが苦しんだ「拘禁反応」の恐ろしさとは?  再審開始は昨年3月に確定。公判は同10月から今年5月まで15回開かれた。弁護側は「証拠は捜査機関に捏造(ねつぞう)された」と無罪を主張。検察側は「(捏造は)非現実的で実行不可能な空論」として改めて死刑を求刑していた。

袴田巌さん=5月撮影

 袴田さんは事件当時、被害者が専務を務めるみそ製造会社「こがね味噌(みそ)」の従業員だった。事件発生から50日目に強盗殺人容疑などで逮捕されたが、否認を続けた。1日平均12時間に及ぶ取り調べで逮捕から20日目に容疑を認めたものの、公判では一貫して無罪を主張した。  ただ、1967年8月、こがね味噌のみそタンクで血痕が付いた「5点の衣類」が発見された。静岡地裁は1968年、5点の衣類は袴田さんの犯行時の着衣でタンク内に隠したと認定。犯行は金目当てと判断し、死刑判決を言い渡した。1980年、最高裁が袴田さんの上告を棄却し死刑が確定した。  袴田さんは翌1981年に再審を請求したが、2008年に最高裁が棄却。袴田さんは同年に第2次再審請求を始め、静岡地裁が2014年、5点の衣類を捜査機関が捏造した可能性を認めた上で再審開始を決定。拘置と刑執行を停止し、袴田さんは48年ぶりに釈放された。  静岡地裁の再審開始決定は、検察側の即時抗告を受けた東京高裁が2018年に取り消した。だが、最高裁が2020年に審理を差し戻し、2023年3月、東京高裁が再審開始を認めた。 【関連記事】「異様さ」に海外も注目 再審開始決定の袴田さんめぐる日本の刑事司法 死刑囚生活45年、再審可否を延々議論 

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