9月26日に判決が言い渡される「袴田事件」の再審=やり直しの裁判。最大の争点となっているのが、「犯行着衣」です。衣類についた血痕の色をめぐり、弁護側・検察側の主張は真っ向から対立しています。

疑惑の証拠、「5点の衣類」。事件から1年2か月後、1度は捜索されたはずの現場近くにあるみそタンクから見つかったズボンやシャツなど血染めの衣類です。裁判所はこれを袴田さんの犯行着衣だと認め、死刑判決の決め手としました。

「1年以上もみそに漬かっていたにしては血痕が赤すぎる」

そう考えた弁護団は再審を求め、1年以上、衣類をみそに漬けてみると血痕は黒っぽく変化しました。この実験が認められ、静岡地裁は再審開始を決めましたが、検察が不服を申し立て、決定は取り消されました。

そこで、弁護団は血痕の色の変化を化学的に証明しようと法医学者に実験を依頼。

<旭川医科大学 奥田勝博助教授>
「みそのような弱い酸や、高い塩分濃度だと、赤みの成分であるヘモグロビンが、ゆっくりと、酸化、変性、分解をしていく」

奥田助教はpHと塩分濃度をみそと同じ環境にすると、血液は短期間で黒くなると報告。弁護団は「血痕が赤い『5点の衣類』は発見直前にみそタンクに入れられた」と主張しました。

2023年、東京高裁は弁護側の主張を支持し、「5点の衣類」は捜査機関により、みそタンクに入れられた可能性があるとして裁判のやり直しを認めました。

10月から始まったやり直し裁判で検察側は、専門家による鑑定書を提出し、真っ向から反論しました。

<検察側の証人・久留米大学神田芳郎教授>
「弁護側の実験というものは単にpHと塩分濃度を(みそと同じ程度に)合わせただけですから、この実験をもって100%1年2か月間みそ漬けした血痕に赤みが残ることがないと証明することは私は絶対にできないと思います」

検察側の証人、神田芳郎久留米大教授は、実験ではpHと塩分濃度だけでなく、「酸素濃度」を考慮する必要があると指摘。みそタンクの底は酸素濃度が著しく低く、それにより血痕の赤みが残る可能性はあると主張します。

これに対し、弁護側はみそ会社の従業員の供述調書に基づき、事件発生から3週間ほどはタンクの中のみそは少なく、「5点の衣類」が事件直後に隠されていたとしたら、酸素に十分に触れ、血液は黒くなると指摘します。

<旭川医科大学 奥田勝博助教>
「事件の時系列に沿って、血痕の周りにあった酸素を考えると、(酸素濃度は)考慮する必要はないと考えている。化学的な答えは1つですので」

判決を左右する「5点の衣類」に付いていた血痕の色。裁判所は26日、どのような判断を示すのでしょうか。

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