9月24日~9月30日は「結核・呼吸器感染症予防週間」です。結核は過去の病気と思われがちですが、今も世界で毎年100万人が亡くなっていて、日本では去年1万人以上が発病しました。結核を予防するため日本ではBCGワクチンの接種、いわゆる「ハンコ注射」が行われています。ほかのワクチンとは違い、どうして特殊な形をしているのか取材しました。
9つの点のブロックが2つ並んだ跡が印象的なハンコ注射。
結核は、免疫力が未熟な乳幼児が感染し発症すると重症化しやすいため日本では1歳未満の子どもに対し接種が行われています。
みなさん、跡は残っていますか?
60代女性:「相当昔なので(跡は)ないと思いますけれど」
嘉藤奈緒子アナウンサー:「あ、ありますね!」
60代女性:「え!ありますか?」
嘉藤アナ:「ここに、点々と…」
60代女性:「あら、全然忘れていたけれど…」
つづいて、こちらの親子は。
嘉藤アナ:「(1歳児の腕)あ、ここにありますね」
30代女性:「自分自身は多分残っていると思います」
嘉藤アナ:「残っていますね、しっかり」
年代は様々でもみなさん跡は同じ形をしています。
ほかのワクチン接種では1本の針で行うのが一般的ですが…どうしてBCGワクチンは複数の針はあるのでしょうか。
もともとは1本針の注射だった
ハンコ注射は、針が9つ付いた「菅針(かんしん)」という器具を使い、ワクチンを塗った腕に、縦に2回押しつけて接種するというもの。
接種か所は「上腕外側中央部」と法律で定められていて、目立たないようにと他の部位に接種することはできません。
富山県衛生研究所 大石和徳所長:
「BCGワクチンは、牛にも同じような病気があって、牛の結核菌を使って弱毒の菌をつくり、ワクチンとして使われています」
結核の予防事業を行う全国組織、「公益財団法人 結核予防会」によりますと、BCGワクチンが日本にやってきたのは今からちょうど100年前の1924年。
初期は経口投与のワクチンのほか、一般的な予防接種と同じ1本の針で注射をしていましたが、1967年に今も使用されているハンコ型の注射に変わったということです。
1本の針で皮下に接種するとケロイドが…
嘉藤アナ:「BCGワクチンは、どうしてハンコ型の注射なのでしょうか?」
富山県衛生研究所 大石和徳所長:
「(1本の針で)BCG菌を皮下に接種すると副作用で膿瘍を起こします。私も傷がありますけれどケロイド状になるんです」
富山県衛生研究所 大石和徳所長:
「そういったことを見直して、(ハンコ型にすることで)浅く菌をいれるというのが一番効率のよい免疫獲得の仕方なんです」
インフルエンザワクチンなどの一般的な予防接種は皮下注射といって真皮の下にある皮下組織にワクチンを注入する方法。
一方、ハンコ注射は皮内注射といい皮膚表面から最も近い表皮とその下にある真皮の間、わずか1mm未満の箇所に注入します。
この場所には樹状細胞という免疫細胞が多く、免疫がよりつきやすくなるといいます。
富山県衛生研究所 大石和徳所長:
「局所の反応が大きすぎると、いわゆる副作用が出てくるので、そこを最小限に抑えて、免疫を最大限に獲得するというのが大事」
そこで、皮内に効率よく接種でき、跡も残りにくいハンコ型の注射器が開発されたのです。
跡の有無はワクチンに対する反応の違い
嘉藤アナ:「ハンコ注射の跡が残っている人と残っていない人の違いはなんでしょうか?」
富山県衛生研究所 大石和徳所長:
「人がやる作業ですから。技術的な個人差はどうしても出てしまう可能性はあるかもしれない」
富山県衛生研究所 大石和徳所長:
「もっとあり得るのは、ワクチンに対する応答に違いがあるということ。(接種後の副作用など)反応が起きやすい人もいるし、そうではない人もいる」
また、年を重ねるごとに薄くなっていき、跡がほとんど見えなくなる場合もあるといわれています。
結核予防会によりますと、1967年に誕生したハンコ注射は、1974年からは4歳の誕生日までに初回接種をしたあと、小学生、中学生の時に定期接種する方式となりました。
その後、2003年からは小学校、中学校での再接種は廃止され、今に至るまで乳幼児に対する初回接種のみとなっています。
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