国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)が10月、スイス・ジュネーブで日本の女性政策について8年ぶりの対面審査を実施する。委員らに当事者の意見を伝えるため、国連にレポートを提出した市民団体代表らが24日、東京都千代田区の厚生労働省で会見し「選択的夫婦別姓の導入や、安全な中絶へのアクセスなどで日本は非常に遅れた状況にある。審査は変えられない政治を変えていくチャンスだ」と訴えた。

選択的夫婦別姓などを求め記者会見する市民団体のメンバー。前列左は「あすには」の井田奈穂代表理事=東京・霞が関の厚労省で(安江実撮影)

 会見したのは、選択的夫婦別姓制度を求める一般社団法人「あすには」、性と生殖に関する健康と権利の推進に取り組む公益財団法人「ジョイセフ」など計8団体。10月17日に国連女性差別撤廃条約に基づき設置された同委員会で日本政府審査が行われるのに合わせ、実態や課題をまとめた。

◆リーダーに占める割合や皇室典範も対象か

 新型コロナウイルス禍を経て、日本は2016年以来の審査となる。同委員会は03年と09年審査で夫婦同姓を強制する民法を改めるよう勧告。前回審査でも結婚前の姓を維持できるよう法改正を勧告した。「あすには」の井田奈穂代表理事は「自民党総裁選や首相答弁でも、国内世論が分かれているとし導入に至らない。マジョリティー(多数派)の同意がなければ、マイノリティーの権利は認められないのか。強い勧告が出ることを望む」と話した。  元同委員長の林陽子弁護士は、婚外子の相続差別や女性の再婚禁止期間、結婚可能年齢の男女差が勧告により改善したと紹介し「勧告は日本の司法や行政に影響を及ぼす」と強調した。  今回の審査では他に指導的地位に占める女性割合や、女性皇族に皇位継承が認められないとする皇室典範なども対象となる見通し。(奥野斐)

 女性差別撤廃委員会(CEDAW) 女性に対するあらゆる差別を禁じた女性差別撤廃条約の履行状況を監視する国連の専門組織。各国の専門家23人で構成、日本からは秋月弘子・亜細亜大教授が就任している。条約は1979年の国連総会で採択され、日本は85年に締結。各国の審査が定期的にあり、各国政府が報告書を提出。委員会は必要な措置を取るよう改善勧告などを出す。市民団体もレポートを出したり、委員に意見を伝えたりできる。



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