テレビ局には番組を観た視聴者から様々な声が寄せられる。TBSテレビの「視聴者センター」は、こうした声を集約し番組制作の現場にフィードバックさせるのが仕事だ。担当者が寄せられた“声”の一端を紹介する。

一つの慣用句について、一週間のうちに2度のご指摘をいただきました。

「盆踊りと言えば敷居が高いイメージですが」と「敷居が高い」を「ハードルが高い」という意味合いで使っていましたが、「敷居が高い」は「不義理や面目のないことがあって、その人の家に行きにくい」という意味です。言葉は変わるとか、若者への理解に配慮したなどと言い訳せず、訂正をして正しい言葉を使うことを望みます。(男性40代)

こちらは『Nスタ』へのご意見。ご指摘の通り「敷居が高い」は本来「義理を欠いていたり、知られると恥ずかしいことがあったりして、その人のところには行きにくい」という意味です。しかし最近は「近寄りがたい、ハードルが高い」という意味で使う人も多くなっていて、辞書にも載るようになってきています。

三省堂国語辞典でも・・・②近寄りにくい。③気軽に体験できない。となっていて、間違いとはいえなくなってきているのです。

その翌々日、同じ「敷居が高い」についてのご指摘が、7月期の人気ドラマ『西園寺さんは家事をしない』にもありました。

《冒頭に「敷居を下げたい」というせりふがありました。まちがった使い方です》

「・・・敷居を下げたいんです」というせりふ、正直これは誤用かな、と筆者も思いました。しかし、「例解 新国語辞典」を見てみると・・・

<敷居が高い> ②自分には立派すぎて入りにくい。とあり、「注意」として、“②の意味で使うことも多くなり、そこから「敷居を下げる(=気軽に利用できるようにする)」のような使い方も生じている” と記載があるのです。

敷居を下げるって、削るの?下げるならハードルのほうが簡単なのに・・・などとひとしきり内輪で盛り上がりましたが、こちらも、間違いとまではいえないということになりました。

とはいえ、正しい日本語を使うことが求められる場面では、やはり本来の意味で使えるようになりたいものです。

さて、今年も7月13日に放送された『音楽の日』。8月に入っても引き続きご意見をいただいています。7~8月で、ご意見数は1200件以上、多くは好意的ご意見です。

8月下旬にもダンス企画へのご意見をいただきました。

今年は参加グループが大幅に増えたのが良かったです。それぞれのグループでのダンスはもちろん、全参加者でのダンスがとくに良かった。是非、来年の『音楽の日』でも、この番組だからこそのダンス企画をお願いします。(40代男性)

一方で、放送直後にはこのようなご意見も。

100人以上も出ていると、ごちゃごちゃして推しがどこにいるかさっぱりわからない。この人うまい!と名前を覚えようと思っても数秒しか映らないから結局誰だったのかわからず。来年は厳選メンバーだけでやってほしい。(30代女性)

番組のコンセプトについてもご意見いただいています。

番組の、被災地への思いを感じます。能登からの中継には涙しました。作っている方々の愛情がしっかりこちらに伝わってくる番組です。自然災害の多い日本では、残念ながら被災地がなくなりません。大変だとは思いますがずっと続けていただきたいです。(50代女性)

いずれにしても、来年の放送への期待を届けていただけるのはありがたいことです。

番組内の予告に対して多くのご意見が来て、スタッフが驚いたのが、『報道特集』8月24日放送の「子供の連れ去り」。前の週に10秒ちょっと流れた予告に対して、放送前に80件以上のご意見をいただきました。

《息子を連れ去られた被害者です。夏休み中も息子と会えず、別居親というだけでさまざまな差別を受けていて、今回の特集には大変興味があります。DVが原因ではない子どもの連れ去りが多いことを、社会に正しく認知してもらえるきっかけになってほしいです》

《私はまさしく「実子誘拐」をして、シングルマザーになるべく奮闘している者です。夫は子どもの前で暴言を吐いたり、私に物を投げ壁を蹴り、恐怖を与え続けました。やっとの思いで家を出て、職を得て⼼休まる楽しい⽇々を子どもと過ごしています。夫は「誘拐だ、連れ去りだ」と騒ぎ「もっと交流させろ」と言ってきますが、子どもが拒否しています。これは「避難」です。どうか誤解をさせるような番組を報道しないでください。お願いします》

予告だけで多くのご意見をいただき、ほとんどは「やってほしい」という好意的なご意見でしたが、この問題への関心の高さが伝わってきました。

(放送後のご意見)
⼦どもの連れ去りを取り上げてくださり本当にありがとうございました。親と引き離された⼦どもたちの心境や、今の気持ちなどを聞くことができて良かったです。実情を理解し、⼦どもたちを一番に考えて取材してくれたことに感謝します。

放送後、どのようなご意見が来るか、注目していましたが、同様に80件を超えるご意見が届き、うち70件以上が好意的なご意見でした。

8月にいただいたご意見の中で、とてもハッピーな気持ちになったのはこちらです。
『THE TIME,』の「けさの1曲」に「奏/スキマスイッチ」をリクエストした方からです。

今⽇、娘の旅立ち(入籍)の朝にリクエストに応えてくれてありがとうございました。家族全員うれしくて大泣きでした。ジャズピアニスト・高⽊里代子さんにも感謝を伝えたいです。(60代女性)

大切な日の朝に番組を見ていただき、お礼のご連絡もくださったこと、とてもありがたいと思いました。番組スタッフも、きっと心温まり、励まされたことと思います。

<執筆者略歴>
浜崎 由佳(はまざき・ゆか)
1995年TBS入社。
ラジオ局、報道局、事業局などを経て、編成考査局。現在カスタマーサクセス室長

【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版(TBSメディア総研が発行)で、テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。2024年6月、原則土曜日公開・配信のウィークリーマガジンにリニューアル。

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