富山湾の新湊沖で獲れるブランド魚『万葉(まんよう)かれい』。初競りで数万円の値がつくほどの高級魚です。ところが今年は漁獲量が例年になく落ち込んでいます。しかも、かかった魚を食い荒らすある生物も追い打ちをかける事態に…。一時は休漁を余儀なくされた漁師たちが1か月ぶりの漁へ出港しました。
富山湾の沖合に浮かぶ一隻の漁船。射水市の刺し網漁師・東海勝久さんの船です。
網漁師 東海勝久さん:「本命のカレイ、ヒラメが来ないですね」
東海さんが例年この時期に狙うのは新湊が全国に誇るブランド魚「万葉かれい」です。
万葉かれいは、新湊沖でとれたマコガレイのうち重さが400グラム以上で傷がなく管理された水槽でしっかりと泥を吐かせるなどの厳しい基準を満たしたもので、射水市の漁師らが2012年から新湊の魅力を発信しようとブランド化しています。
しかし…
網漁師 東海勝久さん:「季節、月が変われば、サイズであったり、枚数が変わる。そういうことはありながらも万葉かれいっていうものを取れたんですが、今年に限ってはスタートから取れない来年も再来年も今のような水揚げが乏しいっていう状況が続くようだと、このブランド自身が消えてしまう」
新湊漁協によりますと7月のマコガレイの漁獲量は前の年の4分の1にとどまりました。8月は漁に出ておらず、不漁の原因はわかっていないということです。
神様、航海安全で大漁ください…
午前5時。セリが行われる漁港の市場に東海さんの姿がありました。
網漁師 東海勝久さん:「これ、のどぐろです。最近でいうとちょっと少なめです」
今シーズンの万葉かれいの壊滅的な不漁を受け、最近はのどぐろやヤナギバチメなど他の魚種に狙いをしぼっていました。
網漁師 東海勝久さん:「かれいはこのあと取りに行きます。1か月ぶりくらい。正直もう今日これで(カレイが)かからないようなら、年内どうなるんだろうという思いも正直あります」
網漁師 東海勝久さん:「行ってみてその魚を見て、魚の水揚げ具合とか、魚の状態から察するので、魚から学ぶと、行ってみないとわかりません」
1か月ぶりの漁へ。午前6時半、港を出発しカレイの生息域である沖合を目指します。
取材カメラマン:「何をお祈りされたんですか?」
網漁師 東海勝久さん:「西宮神社なんですよ。自分たち新湊の地元の漁師の崇敬社。ありがとうございましたは言っちゃダメなんです。(神様が)もう満足したろうって。終わっちゃうから。まだ足りませんまだ足りません。神様、航海安全で大漁ください。ずーっとわがまま言ってる方がいいんです」
高級魚「マダイ」も、ヨコエビにかじられ…
ポイントに到着し早速、網を引き上げます。
網漁師 東海勝久さん:「サザエの殻を宿にしてるヤドカリですねヤドカリがいるっていうことはヤドカリのエサになる魚がいるってことでしょ。そういう意味でいうと海の環境も元に戻ってきたのかもしれないですね」
その言葉通り次々と網に魚が…
網漁師 東海勝久さん:「よかったですよし、スイッチ入りますよね」
網漁師 東海勝久さん:「神様にお願いが通じたんじゃないですか」
本命の万葉かれいではないものの高級魚のマダイがかかりうれしい想定外と思いきや…
網漁師 東海勝久さん:「真鯛の死んじゃったやつです。こういうヒレ食われてるんですよ。ヨコエビにかじられてる」
骨だらけ…生きてうちに食べられてしまう
体長およそ1センチ前後のヨコエビ。魚の死骸などをエサにしているといいます。
ことし6月の漁に同行したときにも…
網漁師 東海勝久さん:「ヨコエビが妙に多くないかっていう話は、(漁師仲間から)先日も聞きましたね」
網漁師 東海勝久さん:「数時間で例えば獲りに行っても、こうなっている、骨になっているくらいに、このヨコエビっていう、これが多いんじゃないか、活発に動いているんじゃないかって」
網にかかった魚が次々と食べられるヨコエビによる食害がいまも続いていました。
東海さんが行う刺し網漁はカーテン状に伸ばした網に獲物を絡めとる漁法で魚が身動きを取れなくなることからヨコエビの被害に遭いやすいといいます。
今年のヨコエビの食害については、ほかの刺し網漁師も被害の深刻さを訴えています。
漁師Aさん:「もうヨコエビだらけ網にかかったものがみんな生きとるうちにもう食べられるから」
漁師Bさん:「もう骨だらけです。(網にかかった魚の)食われるスピードがちょっと早い」
網漁師・東海勝久さん:「(市場に)並ばないです。出荷しないです」
実際に、この日の漁で取れたマダイのうち、おそよ半数がヨコエビによる食害を受けていました。
網漁師 東海勝久さん:「1年中いまのところいます。ヨコエビって自分の中では(食害が)切れる時期がちゃんとあるんですよ。いま、あれ~」
その後も、網にはマダイをはじめワタリガニやヒラメなどがかかりますが…
網漁師 東海勝久さん:「ヒラメ1枚だけでしたねカレイの方が冷水性なので、単純にもしかしたら水温が高すぎて、ヒラメ、カレイは深いところに逃げてるのかもしれないです。逃げているというか浅い所にあがってきていないカレイが1枚も顔見てないので、やばいですね。カレイ、ヒラメの棚を探さなきゃ、ポイントを探さなきゃ」
猛暑の影響か。この日は万葉かれいの姿を見ることはなく終了となりましたが1カ月ぶりの漁に出た東海さんには確かな手ごたえがありました。
網漁師 東海勝久さん:「一部で普段の海に戻ってきたのかな。それどころか悪いところは悪いままかもしれないけど、良いところはもしかしたら良いふうに転じたのかもしれない。そういったポイントがいくつも点在するなっていう見立てが立った。来年は小さくても大きくてもいいんでカレイをたくさんみたいなっていう」
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