東京都渋谷区議会は19日、堀切稔仁(ねんじん)区議(55)=立憲・国民渋谷議員団=に対する問責決議案を可決した。区の五十嵐俊子前教育長について、かつていじめを黙認したなどと選挙公報や交流サイト(SNS)に書き「事実と異なる情報を取り上げ、職員への批判を繰り返した」との理由だった。

◆長谷部健区長が区議長に「厳正な対処」要求

 決議は五十嵐前教育長を任命した長谷部健区長が、丸山高司区議長に厳正な対処を求めたことが発端で、堀切区議と会派は「議会の独立性を損なう」と反発している。

渋谷区役所

 五十嵐前教育長は東京都町田市の小学校長を経て2021年4月、区教育長に就任。校長在任中の20年11月、在学する小学6年児童がいじめを訴えるメモを残して自死した。  堀切区議は4選した昨年の区議選で、選挙公報に「前職でいじめを黙殺した教育長を交代させます」と記載。SNSでも五十嵐前教育長が「いじめ問題を放置した」などと投稿した。

◆いじめを認定したが、学校側の違法・不当認めず

 町田市の第三者委員会は今年2月、いじめの存在を認定する一方で、児童の死亡に他の要因もあったとする再調査報告書を公表。「安全安心な学校経営ができていたら、自死を防げた可能性がある」としながら、学校側に違法・不当な点は確認できなかったとした。  報告書を受けて長谷部区長は8月「根拠のない情報を広め、人権侵害等の事態を惹起(じゃっき)した」として、区議長宛てに堀切区議への厳正な対処を求める要望書を提出。区議会の4会派の幹事長が問責決議案を提案し19日、賛成19、反対9の賛成多数で可決された。

◆堀切区議「関係者に聞いた事実に基づく発言だ」

 長谷部区長は「区議会の賢明な判断を尊重する」とのコメントを発表。一方、堀切区議は「遺族の関係者や弁護士にも話を聞いた事実に基づく発言なので、不当としか言いようがない。議員の萎縮にもつながる」と話した。  大正大の江藤俊昭教授(地方自治)は区長が議会に対応を求めたことについて「教育長の任命権者は区長であり、あまりにも事実が逸脱している場合などは、あり得る」と指摘。一方で前教育長の校長在任時の児童の自殺について、任命時に区長側が区議会に伝えていなかったのは「モラル的に問題があったのではないか」と述べた。(浜崎陽介) 

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