観光船の客室を漂う救命胴衣やロープ。
2022年4月、北海道の知床半島沖であった観光船「KAZUⅠ」の沈没事故から10日後…。

 水深約115メートルの海底で北海道警察の水中カメラが「KAZUⅠ」の様子を撮影しました。

 「KAZUⅠ」元船長
「黄色のは子ども用の救命胴衣じゃないかと思う」

こう、話すのは事故の2年前まで、5年にわたり「KAZUⅠ」の船長をしていた男性です。

「KAZUⅠ」の構造をよく知る人物として、海上保安庁や運輸安全委員会などにも情報提供をしています。

「KAZUⅠ」元船長
「まだ捜査段階なので、あまり大きなこと言えないけど」

 「KAZUⅠ」元船長
「(天井に穴が開いているんですか?)エンジンを載せ換えるときに天井を切り取らなきゃいけないの。エンジンを載せ換えたら新たに板を張って天井なり床なり作るんだけど、そこがきれいに剥がれ落ちたんだろうね。沈むときに」

 「KAZUⅠ」元船長
「シートみんな剥がれているじゃん。ここのシートは、はめ込み式だから。乗っかっているだけだから水が入って浮力があるとみんな浮き上がって外れていく。浮き上がって(シートが)外れたところに、たまたまリュックサックが収まっただけだと思う」

今回、北海道警察が公開した約50分の映像。

元船長は客室の前方に一瞬映った「あるもの」に着目しました。

「KAZUⅠ」元船長
「これ何?俺の目には発電機のように見えたけど」

 表面がオレンジと黒に見える四角い物体。そのロゴマークからインバーター発電機だとみられます。

「KAZUⅠ」元船長
「なんでこんなところにあるんだろうね。(ふだんは載せない?)載せないよ。もしかしたら船の発電機が壊れているのかもしれない。それでも客室には置かないか…」

元船長が現役だった当時は、船内になかった発電機。なぜ?元船長は「KAZUⅠ」が電気系統が万全でないまま出航していたのでは…と推察します。

 「KAZUⅠ」元船長
「船にも発電機があるんだよ。エンジンに付いているやつ。もしかしたら船の発電機が機能していなくて、こうやって発電機を積んでいたのかもしれない」

「KAZUⅠ」元船長
「(どのような影響が?)船は走るよ。だけど電気機器が一切使えなくなるから、レーダーにしたって」

沈没事故は防げなかったのか。元船長は、改めて悔しさをにじませます。

 「KAZUⅠ」元船長
「戻ってくるチャンスは2度3度あったはず。実際1時間のコースの折り返し地点でクマ見てるわけだから。そこで戻って来ればよかったのに、どうして無理して行ったのか」

元妻と当時7歳の息子が行方不明のままの帯広市の男性は、今回、初めて映像を確認しました。

 元妻と息子が行方不明 帯広市の男性
「やっぱりつらいです。自分の家族も同じ景色を、この船内を見ていたんだと。どんなに怖い思いをしたんだろう。考えられないぐらいの恐怖だと思う」

今年2月、当時7歳の息子の死亡認定を申請し、遺族として裁判に参加する決断をした男性。運航会社の桂田精一社長への怒りは、募りばかりです。

元妻と息子が行方不明 帯広の男性
「これだけの事故を起こして、被害者がたくさんいるのに、なぜ今も普通に暮らしている。許せないです」

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