いわゆる「松橋事件」で再審無罪となった男性の遺族が国や県に損害賠償を求めている裁判で、原告側の弁護団が9月13日の裁判後、証人尋問での当時の捜査関係者の発言を非難しました。

「松橋事件」とは

1985年 事件発生当時の様子

「松橋事件」は1985年、市町村合併前の熊本県松橋町(まつばせまち)、現在の宇城市松橋町の町営住宅で当時59歳の男性が殺されているのが見つかった事件です。警察などは、被害者と知り合いだった宮田浩喜(みやた こうき)さんが犯人だとして、遺体発見から12日後に殺人などの疑いをかけて逮捕しました。

宮田さんは裁判で無実を訴えましたが裁判所は認めず、懲役13年が確定して服役しました。

しかしその後、捜査機関が宮田さんにうその自白をさせた可能性が高まり、2016年に熊本地裁が再審(裁判のやり直し)を決め、2019年に無罪が確定しました。

2019年 再審無罪判決

「捜査の違法性」を問う

しかし、再審の判決では誤った判決に至った理由などは触れられなかったため、宮田さんは捜査の違法性などを明らかにするため、国と熊本県を相手取り、約8500万円の損害賠償を求める裁判を2020年に起こしました。

宮田さんは裁判を起こした直後に87歳で亡くなったため、裁判は遺族が引き継いでいます。

当時の担当警察官・検察官は

9月13日の証人尋問では、捜査に関わった当時の検察官と県警の巡査部長が証言台に立ちましたが、当時の捜査内容などについて、いずれも「記憶にない」や「わからない」などと発言するだけで、具体的な証言は出ませんでした。

また、検察官だった70代の男性は、宮田さんが再審無罪となったことについて、「証人尋問の関係で国や県側の代理人弁護士から知らされるまで(再審無罪になったことを)知らなかった」と発言しました。

弁護士「あまりにも不誠実」

宮田さんの遺族側の弁護士は、この日の裁判終了後に開いた記者会見で、こうした当時の捜査関係者の発言を非難しました。

原告弁護団 吉野雄介弁護士「あまりにも不誠実な態度だと思いました」
原告弁護団 国宗直子弁護士「自分がした起訴が1人の人の人生をめちゃくちゃにしたかもしれないのに、一つ一つの事件をそういう扱いしかしていないのかと思って腹が立ちました」

この裁判は今年(2024年)12月に結審し、今年度中に判決が言い渡される見通しです。

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