能登半島地震で被災した家屋の古材を復興に役立てる取り組み「のと古材レスキュープロジェクト」が、石川県輪島市で進んでいる。解体前の古民家や商家から回収した床板や建具を使って、地元の木工職人が新たに家具を製作。家主に戻したり、次の使い手に引き継いだりして再利用する。完成した家具の一部は今月末ごろ、東京都内でも展示される予定だ。(脇阪憲)

◆「思い出を違う形で残せたら」

 団体は、輪島市三井町で民間のボランティアセンター機能をつくり、被災地支援に当たる「のと復耕ラボ」。地震前からの輪島への移住者が中心となって2月9日に設立され、これまで延べ1500人以上のボランティアを派遣するなどしている。  プロジェクトは、設立当初から構想としてあった。代表の山本亮さん(37)によると「柱1本でも持って行けたら気分が違うのにな」という被災者の声を耳にし「家というなくなる思い出を、違う形で戻せたら」と動いてきた。ラボのメンバーで、地震前から古材の再利用事業を手がける建築士の江﨑青(あお)さん(34)が中心となり、7月に被災家屋からの回収を始めた。  7月31日には、輪島市三井町の築約80年の古民家で作業した。畳の下から漆が塗られた板材、床の間のケヤキ板などを回収した。

床板などが運び出されるのを見守る「のと復耕ラボ」の山本亮さん(右)と山浦芳夫さん=石川県輪島市で

 「何か残してくれるという気持ちがうれしい。生かしてくれてありがとう」  作業を見守った家主の山浦芳夫さん(89)はそう感謝する。地元の木材を使って父が建てた家で、当時中学生だった山浦さんは坂の下から木材を運ぶのを手伝ったという。長年住んだ家には多くの思い出が残る。「山国に育った者として、木には特別な愛着がある。おやじも山の良い木を使い、何代も続くと思って建てたはず」

◆9月末、東京でレスキュー家具の展示目指す

 父の思いを理解していたが、地震で中規模半壊の判定を受け、やむなく公費解体を申請した。「寂しい思いがしていた」。そんなときにプロジェクトを知り「残せるものなら残したい」と依頼した。  回収した古材は一度保管し、能登の木工職人の手で、テレビ台や椅子などの家具に生まれ変わる。山浦さんの家の古材を使った家具は9月末ごろに完成する見込みで、同時期に東京で他の古材を使った家具の展示開催も目指す。交流人口の増加を目的に、将来的には販売も視野に入れる。  江﨑さんは「自分たちがやれることは微々たるものかもしれないが、古材を大事にするカルチャーが広がっていけば」と願った。のと復耕ラボは、古材の回収希望者をウェブサイトなどで受け付けている。回収した古材を保管する場所を提供してくれる人も募っている。 

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