8月16日、関東の東を北上してきた台風7号の影響で、宮城県と福島県で線状降水帯が発生する可能性があるとする予測情報が出されました。

また、その5日前の8月11日にも台風5号が東北地方の太平洋側から上陸すると予想されたため、線状降水帯の予測情報が、宮城、岩手、青森の各県に出されました。この情報は2022年から運用が始まりましたが、東北地方に出されたのはこの日が初めてでした。

実際には線状降水帯発生せず…

しかし、結果的には台風5号でも7号でも線状降水帯は発生しませんでした。

気象庁のワーキンググループの委員を務め、線状降水帯の予測向上に取り組む東北大学の伊藤純至准教授は、この2つの事例はともに台風の予測そのものが難しかったと指摘します。

東北大学 伊藤純至准教授:
「今年の5号、7号に関しては、台風が予測よりは実際の進路・勢力ともに宮城やその近辺に影響が少ない方向に推移したというのが原因です」

今年はこのように線状降水帯の予測情報を出しても実際には線状降水帯が発生しないいわゆる「空振り」が全国的に相次いでいます。

「空振り」に専門家も危機感

気象庁の8月22日現在のまとめでは、それまでに出した44回の予測情報のうち実際に線状降水帯が発生したのはわずか2回しかなく、伊藤准教授も危機感を抱いています。

東北大学 伊藤純至准教授:
「空振りが多くなればなるほど、いわゆるオオカミ少年的な情報になってしまって、この情報が出ても実際は線状降水帯は起こらないと、身に差し迫った危機として認識されなくなってしまうということが懸念されます」

一方で、山形県内では7月に予測情報が出されていないのに、2度にわたり線状降水帯が発生する記録的な大雨となりました。東北地方は、2022年や2023年もこうした「見逃し」で大きな被害が出た事例があります。

線状降水帯予測の難しさ、理由は海上にあった

線状降水帯発生の予測はなぜ難しいのでしょうか?

伊藤准教授は、線状降水帯をもたらす海の上の水蒸気に関して、陸上に比べると観測データが少ないことが予測の難しさにつながっているといいます。

東北大学 伊藤純至准教授:
「日本海側は海上から入ってくる暖湿気や気象擾乱(低気圧など)の影響を強く受けます。そのあたりの観測がまだ十分でないという可能性もあります」

宮城県内で近年線状降水帯が発生した事例としては2015年9月の関東・東北豪雨と2019年10月の台風19号があります。このように線状降水帯は甚大な被害をもたらすことがありますので、予測精度の向上が望まれるところです。

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