宮城県塩釜市で75年にわたって多くの人の晴れの日を見守ってきた結婚式場が、8月末で閉店しました。「どんな形であってもまた使ってほしい」と店では、閉店を決めた今年5月から貸衣裳を格安で販売し多くの人に届けてきました。

後継者がおらず閉店決意

塩釜市南町にある結婚式場「ブライダル・プラザわかば」。

1949年に美容院として営業を始め、その後、結婚式場や衣裳の貸し出しなどにも業務を拡大しながら、75年間、多くの人の「晴れの日」に携わってきました。

今年8月で閉店することになり、レンタル用のウエディングドレスや振袖、七五三の衣裳などを格安で販売するセールを4か月前から行ってきました。

ブライダル・プラザわかば 遊佐真人社長:
「承継者の息子に意向を聞いたら継がないと。(閉店を決めて)感謝とさみしさとあります」

店は、社長の遊佐真人さんと妻の陽子さんで切り盛りしてきましたが、後継者がいないことなどを理由に閉店を決めました。

息子の投稿「バズる」

一人息子の遊佐亮介さんは、首都圏在住で俳優として活躍しています。

店を継ぐのは難しいと決断しましたが、最後に何かしたいとSNSに投稿。これが予想以上の反響を呼び閉店セールは連日、多くの人でにぎわいました。

山形から来た買い物客:
「姉から(旧)ツイッターで(教えてもらった)いろいろあって迷ってしまってなかなか選べないでいるんですけど、楽しいです」

髪飾りなどを販売しているコーナーにはかんざしを選ぶ一人の女性が。

星井絵名さん:
「ワンストーリーアワードという女性のコンテストでグランプリをいただきまして、今度ニューヨークの大会に出場します。そこで日本の文化をお伝えするのにいいかなと」

塩釜市内に住む星井絵名さん。文化交流を目的としたコンテストで着用する振袖に合わせる髪飾りを探しに来ていました。

星井絵名さん:
「お店が無くなるのはさみしいんですけど。塩釜の人間なので、私が譲り受けたら塩釜からかんざしが出ていかないかなと思って」

どんな形でもまた使ってほしい

閉店まで1か月を切った8月3日、さらに価格を割り引くファイナルセールが開催されていました。着物の良さを引き立てるうえで重要となる帯。高いものではひとつ10万円ほどにもなるといいます。

ブライダル・プラザわかば 遊佐真人社長:
「こちらの値段がセール価格になりまして、8月になってから、またこれから50%引きということで。(この帯は)5000円というお値段で出しています」

これまでさまざまな人の晴れの日を彩ってきた衣裳や小物。社長の遊佐さんは、一人でも多くの人のもとに届き、新たな形で活用してもらいたいと願います。

ブライダル・プラザわかば 遊佐真人社長:
「着ていただくだけでなくて、着物をリメイクしてお洋服作ったりお人形作ったりとか、それでも構わないと思います。それが生きてくれればということで、お安くお渡しできれば」

買い物客:
「お値段結構するじゃないですか、こういうお衣裳。欲しいなと思ってもなかなか手が出せなかったんですけど、リーズナブルな値段で出してもらえたから、購入できた」

かんざしが海を越えた

そして、以前この店でかんざしを購入した星井絵名さん。ニューヨークで行われた文化交流のイベントに参加した様子を報告しようとこの日、店をたずねました。

ブライダル・プラザわかば 遊佐社長の妻 陽子さん:
「いいですね、何にでも合いますね、この黒いお着物にもすごく」

かんざしを購入した星井絵名さん:
「この振袖が日本大会に出たときにつけていたもので、そこにかんざしを使わせていただいて」

このかんざしは、およそ30年ほど前から多くの花嫁の特別な1日を彩ってきたといいます。

ブライダル・プラザわかば 遊佐陽子さん:
「ここが無くなったときに、その後のかんざしの人生、どんな風に生きていくのかなと。そんな晴れやかなところでまた輝けるっていうのは、すごくうれしいだろうと思って」

星井絵名さん:
「塩釜を象徴するお店ものをもってニューヨークに行けたのはうれしかった。かんざしを通して日本のこと知っていただけたのかな。この建物の印象を覚えている人はたくさんいると思うので、このなかにはこんなすてきなものが活躍していたんだよということを伝えていきたい」

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