葛飾区柴又の江戸川で28年間、魚類の定点調査を続けている団体がある。その名は「新八(しんぱち)水路・自主生物(いきもの)調査団」。調べた回数は327回に達し、確認した魚は計59種類と1地点当たりで都内最多。特定外来生物は駆除するが、それ以外は観察・測定後に捕った場所に戻している。

投網で捕獲した江戸川の魚=いずれも葛飾区柴又で

◆「大物や珍しい魚が捕れたときが楽しい」

 投網にはコイ科の淡水魚オイカワがかかっていた。調布市の飯島香織さんは初回調査からのメンバーで参加したのは320回以上。「学生のときに大学の先生に誘われた。大物や珍しい魚が捕れたときが楽しい」と、胴長姿で投網を巧みに操る。8月は50センチ超のクロダイを捕まえた。

投網を使い、江戸川の魚を捕獲する参加者

 千葉県野田市の会社員関口正平さん(28)は中学生のときに調査に加わった。「柴又に生家があり、たまたま見かけた。魚を捕まえるのがおもしろそうだったから」と語った。

◆月に1回調査、これまでに59種類を記録

 調査は1996年2月、江戸川から柴又地域に水を引き込む旧農業用水路「柴又新八水路」が復元されたのをきっかけに始まった。当初は都立農産高校の生物部の活動を市民がサポートする形だったが、いまは一般市民が中心。「葛飾柴又寅(とら)さん記念館」近くの江戸川本流、新八水路、本流とつながる池のような形の「ワンド」の3カ所で、月に1回、団員らが投網とたも網で魚を捕獲している。  捕まえた魚は水槽に入れて観察し、体長を測定したら川や水路に戻す。ただ、特定外来生物は駆除する。結果は葛飾区に報告し、調査団のホームページで公表している。これまでに59種を記録した。

◆外来種が入り込んだ可能性を明らかに

捕獲したボラの大きさなどを調べる

 記者が訪れた日は10人が活動し、16種を確認した。本流ではオイカワ、ボラ、ニゴイ、ヌマチチブ、マハゼなど11種、水路ではスミウキゴリなど3種だった。  ワンドでは3種。多かったのは特定外来生物のカダヤシ30匹。北米原産の3~5センチの淡水魚で、ボウフラを食べることからこの名が付いた。繁殖力が強く、在来種のメダカなどが駆逐される原因の一つとされる。ワンドと水路で捕れたメダカは12匹。特定外来生物はほかにコクチバス7匹、ブルーギル1匹だった。

捕獲した魚を場所ごとに水槽に入れ、大きさや数を調べる参加者

 外来種では、2022年9月の調査で都内で初めてカラドンコを捕まえた。ハゼの仲間の淡水魚でベトナムや中国が原産。すでに茨城県内などでは生息が確認されており、都内にも入り込んでいる可能性がこの調査で明らかになった。

◆「外来種の問題、ほかの地域と同様に深刻」

 事務局を務める葛飾区の一澤成典さん(70)は「外来種の問題はほかの地域と同様に深刻だ。当地の問題としては新八水路の土手が崩れて泥が堆積していること。しゅんせつする必要がある」と指摘する。水路の中ほどには泥がたまり、干潟化していた。

投網を使い、江戸川の魚を捕獲する参加者=葛飾区柴又で

 川に入って4時間も魚を探し、捕まえる作業は重労働だ。夏場は最高気温が35度を超える日もあり、参加者は汗まみれ。初めて加わったという千葉県市川市の会社員佐藤一郎さん(37)は「きつかったが、楽しかった。次も参加したい」と話していた。  参加希望者は調査団のホームページからメールで申し込む。  ◆文・桜井章夫/写真・田中健  ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。

調査で捕獲したオイカワ

調査で捕獲したカダヤシ



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