シリーズ「現場から、」です。3年前、海外赴任先のタイで過重労働の末に自ら命を絶った男性。母親は、海外で過労により自殺する人を出したくないと訴えています。

母 上田直美さん
「これを読んだときは、やっぱり自死だろうなと…」

富山県出身の上田優貴さん。3年前、赴任先のタイでこの世を去りました。27歳でした。

「環境と電気をつなぐ仕事がしたい」と、2018年に大手機械メーカーの日立造船に入社。2021年1月、タイに赴任し、しばらくして専門外であるごみ焼却発電プラントの試運転業務に従事しました。

ミスをすると上司から厳しく叱責されるようになり、その年の4月、プラントから転落し、亡くなりました。直前1か月間の時間外労働は、149時間を超えていたということです。

母 上田直美さん
「本当にささやかなことができたとか、喜びをつづって…」

亡くなる直前、上田さんは父への感謝の言葉を日記につづっていました。

「かなり長い間プレッシャーの中で働くことの大変さに気づいて、今まで距離を置いていたことを申し訳なく思った。誰よりもまじめで辛抱強い父だと気づいた。今になって父の子で良かったと思う」

会社側が設置した第三者委員会は、自殺か事故か認定できないと結論づけましたが、大阪南労働基準監督署は今年3月、「海外での経験のない業務や上司からの叱責で精神障害を発症していた」として自殺での労災を認めました。

遺族の弁護団は海外での勤務実態の把握は難しく、過労自殺の立証は困難を極めたといいます。

そして、先月、初めて会社側との話し合いの場が持たれました。

遺族側の弁護士によりますと、会社側に求めている海外派遣時の勤務マニュアル作成や損害賠償金などについて協議したということです。

遺族弁護団 岩城穣弁護士
「実情を見て防止策をいっしょに考えたいというスタンス。そこが十分伝わっていない」

母 上田直美さん
「従業員には一人一人、大事な家族がいることを忘れないでほしいです。そして元気だった息子を返してください」

母・直美さんは、命の大切さを考える集会で、企業のグローバル化が加速する中、海外での過労自殺を社会問題として捉える必要があると訴えました。

母 上田直美さん
「海外に行って同じ目にあわないように改善を会社に求めていくことで何かが変わって、(同僚や後輩には)息子の分まで活躍してくれれば」

日立造船は取材に対し、「安心して働ける環境づくりに今後さらに注力してまいります」としています。


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