みなさんは、“きょうだい児”という言葉をご存じでしょうか。病気や障がいのある兄弟・姉妹がいる子どもたちのことで、周囲には打ち明けづらい悩みを抱えている子どもも少なくありません。

愛媛県松山市で暮らす、中山穂乃果さん(当時15)。妹の結衣花さん(当時11)は、国内で12万人に1人と報告されている難病・メチルマロン酸血症と闘っています。

(母・理江さん)
「赤ちゃんの時に食欲がなくなってしまって、鼻にチューブを付けて、まだちょっと食べるのに時間がかかりそうって先生に言われて、それから胃ろうを作って」

結衣花さんは生まれつき代謝に異常があり、口からの食事が難しいため、3歳の頃から、お腹に空けた穴にチューブを通す胃ろうで栄養をとっています。

チューブから栄養をとっている約1時間、ひらがなカードを使ってクイズをしたり、絵本を読み聞かせたり、率先して妹の面倒を見る穂乃果さん。リハビリに同行するうちに、妹との遊び方を自然に身に付けたといいます。

(母・理江さん)
「意思疎通が取りづらかった時によく噛んだり叩いたりってことがあったんですけど、何をされてもお姉ちゃんはやり返すこともなく我慢して『結衣ちゃん駄目よ』って優しく言ってました。そういう場面で私が『結衣ちゃんそれは駄目よ』って怒ったりしたら、逆に穂乃果に『お母さん、結衣ちゃん分からんけん、そんなに怒ったら駄目』って、私が怒られるんですよ」

(穂乃果さん)
「かわいくて、怒りたくなかった」

幼い頃から妹の病を理解し寄り添ってきた穂乃果さんですが、きょうだい児ならではの問題に直面することもありました。

どうしたら寂しさを埋められるのか… 母親の葛藤

(母・理江さん)
「この病気は、3歳くらいまでに風邪が悪化して亡くなるケースもあるような病気です、と説明を受けていたから、お姉ちゃんの風邪ひとつ熱ひとつでも、すごくびくびくしてしまって」

父親は仕事の都合で家を空けることが多く、妹の結衣花さんには母親の医療的ケアが欠かせないため、体調を崩した穂乃果さんを市外に住む祖父母の家に預けることも多々ありました。

穂乃果さんは母親と離れるのが嫌で、熱があっても我慢することさえあったといいます。

(母・理江さん)
「しんどいと思っても、私には言わずに隠して我慢してる。熱測ってみようかと言ったら『いやだ~いやだ~』って」

祖父母宅で過ごす穂乃果さんに、母・理江さんが欠かさず送っていたのが、手書きのイラストを添えたメッセージ。どうすれば寂しさを埋められるのか、悩みながら娘と向き合ってきました。

(穂乃果さん)
「FAXが届いたとき、ワクワクしていたのは覚えてます」

(母・理江さん)
「今もそうなんですけど、小さい時からものすごくしっかりしてました。子どもっぽくないというか、芯がしっかりしてるというか。今思えば、お人形遊びとか相手してほしい遊びも、私は結衣花の方にかかりっきりになって、かまってあげられなかったから。『ちょっと待ってね』と言うことが本当に多かったです」

甘えたい時に、甘えさせてあげられなかったと振り返る母・理江さん。ある日、穂乃果さんから言われた言葉が、今も忘れられないといいます。

「私なんか、生まれてこんかったらよかったんだろ」って半泣きで私に言ってきたことがあって…

(母・中山理江さん)
「『もう私なんか、生まれてこんかったらよかったんだろ』って半泣きで私に言ってきたことがあって。まさかそんなこと言ってくるとは思わなかったので私もつらかったですけど、それ以上に多分、穂乃果の方が色々我慢したりすることが多かったから、つらかったのかなって」

――その時は寂しかった?
(穂乃果さん)「寂しかったのかな…」

(母・理江さん)
「『障がいがある子を育てるのは大変でしょ』って結構周りから言われるんですけど、きょうだいの方を支えていく方がわりとつらいというか」

そんな時出会ったのが、難病の患者と家族を支える認定NPO「ラ・ファミリエ」でした。

自分を吐き出す場であってほしい

団体では、子どもの長期入院の際に家族が滞在する施設を運営しているほか、入院中の子どもたちへの学習支援ボランティア、闘病中の子どもと家族を招いたキャンプなど、様々な支援を続けています。

(ラ・ファミリエ理事・西朋子さん)
「きょうだいさんは、どうしても良い子でいたり取り残されたりすることがたくさんあるんですけど、ここにいると普通の子どもであって、我慢する自分を吐き出す場であってほしいなと思います」

団体では毎年、きょうだい児が主役のイベントを開いています。今年は4人の子どもたちを、15人ものスタッフがサポート。コロナ禍でイベントはオンライン開催が続いていたため、友人とも久しぶりの再会です。

―――2人が会うのはいつぶり?
(穂乃果さん)「小6くらい?3年前?」
(永野春菜さん)「きょうだい児って自分の周りにおらん」
(穂乃果さん)「なかなかおらん友達よね」

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