1日開幕した「おわら風の盆」。今年も全国から大勢の観光客が訪れていますが、近年は、担い手不足や資金難が課題となっています。運営資金確保のため、今年は、好きな町内のうちわを買って、その町内を応援する“推し活”グッズが登場しました。持続可能な「おわら風の盆」へとつながるのでしょうか。

哀愁を帯びた胡弓と三味線の音色が響き、踊り手たちが繰り広げる優美な舞。富山に秋の訪れを告げる「おわら風の盆」は、立春から数えて二百十日の台風到来の時期に風封じを行い、五穀豊穣を願う民謡行事で、9月1日から3日までの期間中、町流しや輪踊りなどが行われます。

今年は、この「風の盆」の由来の通り、台風10号が日本列島を直撃し、一時は開催が心配されました。各町では夜の町を彩る“ぼんぼり”を、一度設置したものを撤去したり、設置を遅らせたりする対応がとられました。

西町の住民:「飛ばされたらまずいということで、とりあえず看板は付けない状態で、まだ準備段階という感じです」
西町の住民「晴れてくれればと思うんですけど…」

台風の影響なく安堵 “坂の町”にどっと人波
岐路に立つ「おわら」

そして迎えた初日。幸い台風の影響もほとんどなく、坂の町には開催を待ちわびた大勢の観光客の姿がありました。祭りの運営などを行うおわら風の盆行事運営委員会によりますと、初日の1日は全国から約7万人が訪れたということです。観光客らは、輪踊りや街流しの美しい所作に見入り、思い思いにおわらの情緒を楽しんでいました。

江戸時代から300年以上受け継がれてきた「おわら風の盆」は、いま、岐路に立たされています。少子高齢化などで全国的に祭りの後継者不足が、課題となっていますが、”坂の町”も例外ではありません。

おわら風の盆行事運営委員会橘賢美さん:「少子化が影響しています。外孫といいますか嫁いだ先が(おわらの)地域外であっても協力して連れてきているので、なんとかやってますが、こればかりはなかなか手の打ちようがない」

踊り子の数が年々減少するなど担い手不足に頭を悩ませています。

おわら風の盆行事運営委員会橘賢美さん:「いずれ各町ごとのやっているものを、小さく運営できなくなった町同士で合併するようなことを考えてく必要が、いずれでてくると思っています」

もう一つの課題が運営資金の不足です。これまでは協賛社からの資金や富山市の補助金などをもとに運営してきました。しかし、仮トイレなどの設備やスタッフの雇用にかかる経費が年々増加。追い打ちをかけるように近年の電気代の高騰などで、資金繰りが苦しくなっています。

おわら風の盆行事運営委員会:橘賢美さん「いつまでもあると思うな補助金と協賛金という考え方でいま、独自の努力をしているわけです」

“推し活グッズ”うちわは1本1000円
好きな町のうちわを買って町を応援

財政難の中、今年から新たに始めたのが“推し活”グッズです。本来は好みのアイドルなどをさまざまな形で応援する活動のことですが、観光客に購入してもらって応援してもらうこの“推し活”で、収益アップにつなげようというのです。

県職員:「利益は来年度以降のお祭り等に活用させていただきます。ぜひ皆さんおわらを応援よろしくお願いします」

今年販売されたの推し活グッズは、“推し活”うちわと“推し活”手ぬぐいで、うちわには、おわらを継承する11の町のマークがデザインされていて、1本1,000円。地元の伝統工芸である「八尾和紙」を使った数量限定のうちわは1本3000円です。

手ぬぐいには、踊り手などがデザインされていて、1枚3000円です。これらは、行事運営委員会が販売する初めての「おわら風の盆」公式グッズです。

期間中に用意したうちわ2700枚のうち、1日だけで約1000枚が売れたということで好調な出足となりました。

長野県から来たうちわ購入者:「諏訪町推しなんで。良いでしょあの坂道の感じ。やっぱり(おわら風の盆は)残してほしいですね」

富山県射水市から来た購入者:「やっぱりずっと続いてほしいですから。できることはこれくらいしかないですからね。応援させてもらおうかなという考えです」

地元のうちわ購入者:「西町の買いました。財政難をひしひしと感じますし、運営費もどんどん削減されていってしまっているので、こういった取り組みで皆が楽しく祭りができたらいいなと思います」

「近くで見られるっていいですね」
新たな収入源確保へ有料観覧席も設置

財源確保のための新たな取り組みとして、今年試験的に有料の観覧席も試験的に導入されました。若宮八幡社の境内に設けられた特設会場には、椅子が設置され、観光客は間近で舞や演奏を堪能しました。

この有料観覧席は、行事運営委員会が富山市や旅行会社などと連携して企画したのもで、1日は東京発着のツアー客約50人が参加しました。

町流しとは異なる静かな空間でおわらを鑑賞した観光客は…

ツアーの参加客:「間近で見られてとてもよかったです。本当に貴重な経験でした。楽しかったです。(有料の価値はありますか?)ありますよ。満足度は? 100点。120点」

ツアーの参加客:「いいですね。近くで見られるというのは見素晴らしいことですね。座って見られるということを言われて、そんなラッキーなことあるのかなと思って助かりました。もう年だから」

観覧料はツアー代金に組み込まれていて、一部が祭りの運営や保存に充てられるということです。

おわら風の盆行事運営委員会:橘賢美さん「三百数十年の歴史があって、先人たちが築いてくれた、八尾の町民文化ですので目いっぱい継承していきたいなと考えております」

坂の町で300年以上続くおわら風の盆。
後世に遺す取り組みは始まったばかりです。

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