抹茶の原料となる「てん茶」ですが、うまみを引き出すために1か月程度、日光を遮る必要があります。静岡県内の企業がこの特性を逆手に取り、お茶産業をソーラーパネルで持続可能にするシステムを考えました。
<社会部 山本太朗記者>
「一般的な茶畑ですが、畑の上にはソーラーパネルが設置されていて、“SDGsな茶畑”です」
その名も「茶畑ソーラー」。抹茶の原料となるてん茶を有機栽培する施設です。静岡県菊川市の「流通サービス」は抹茶を海外およそ40か国に輸出しています。
<流通サービス 服部吉明社長>
Q. 上に太陽光パネルがあって、この幕は?
「いい抹茶を作るために『2枚棚』が必要で。1枚を上に1回かけて、ある程度たったらもう1枚をかける。徐々に暗くしていく。お茶を摘む1か月前から」
抹茶の原料となるてん茶は、うまみを引き出すために光を遮って、葉を柔らかくする「被覆栽培」を行います。
その方法は、茶畑に直接遮光材を被せる「直がけ被覆」と茶園に棚を建てて、その棚に遮光材をかける「棚がけ被覆」があります。
棚がけにすることで、風通しが良くなり、より質の高い茶葉ができるといいます。
<流通サービス 服部吉明社長>
Q. 涼しいですか?
「一番暑い時に37℃くらいあった時でも30℃くらいだったので、6℃から7℃くらいは下がる。実際、人間がいても涼しい。これだったら気持ちいい」
てん茶の摘採は春と秋の年2回ですが、夏の作業の負担軽減にもつながります。しかし、棚を設置するには、約1000平方メートルで1500万円から2000万円の初期費用が必要です。
<流通サービス 服部吉明社長>
「本当の良い抹茶を作るためには、棚が必要だと。棚をやるためにはコストが合わない。棚のコストを安くするために考えたのが、上にソーラーパネルを載せれば棚の代わりになるという発想」
太陽光パネルの売電収入は、年間およそ3000万円。このシステムで初期費用が回収でき、お茶を収穫するまでの収入も確保できます。
発電した電力は、売るだけでなく、自社工場でも使います。工場を稼働させるための電気代は、年間およそ400万円。その電気代の4分3を賄っています。
日本食ブームや健康志向の高まりから海外で巻き起こっている空前の抹茶ブーム。海外から抹茶を含む粉末茶の需要が拡大したことで、2023年度の緑茶の輸出額は過去最高額の292億円。10年前と比べ、約4.4倍となっていて、右肩上がりで増えています。
太陽光パネルを利用したてん茶の栽培は、耕作放棄地の復活と静岡の茶業界再生につながるといいます。
<流通サービス 服部吉明社長>
「30代、40代のやる気のある若手の農家も、同じ作業をするなら効率のいい農業をしたい。市場はまだ40数か国ですから、世界200か国あると考えると、まだ数百倍市場は残っている。農地として使っていた所は、農地として使うことをやらなければいけない」
日陰が必要な「てん茶」と日光が必要な太陽光パネル。2つの特性を組み合わせたシステムが茶産業を持続可能なものに導きます。
茶産業は後継者不足や猛暑などの影響で厳しい状況が続いています。働く人にも環境にもやさしい「茶畑ソーラー」で静岡県内の耕作放棄地を活用しながら、若手農家の育成にも力を入れていきたいということです。
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