堅守が光った京都国際高校の初優勝で熱戦の幕を閉じた今年の夏の甲子園。今大会は、本塁打が全7本と金属バットが導入後最少になりました。今後、高校野球は変わっていくのでしょうか。富山県野球協議会強化普及振興部の委員長を務める伊東与二さんは、富山のような野球後進県でも優勝のチャンスが出てきたと歓迎します。
熱戦が続いた夏の甲子園。
第一号本塁打が飛び出したのは、富山商業と東海大相模との一戦でした。大会6日目での第一号は、金属バットが導入された1974年以降最も遅く、全7本も春のセンバツ大会に続いて過去最少の記録です。
今大会について、富山県野球協議会強化・普及振興部委員長の伊東与二さん(70)は、「木製バット時代」の高校野球に戻ってきたといいます。
伊東与二さん:「勝ち残ったチームは守備力が抜群に良い。守備力が今年の甲子園の勝敗を大きく分けていますよね。初歩的なミスをするチームは勝てません。点の取り合いをするようなチームはもう勝てません」
「捉えたと思っても…」「木製に近い感覚」低反発バット球児たちの使用感は?
今年から導入された“低反発バット。
最大直径を3ミリほど細く、金属の厚みを1ミリ以上厚くし、反発性を抑えたバットです。
投手が打球を受けてケガしないようにすることや投手の投球過多によるケガ防止などを目的に今年から導入されました。
夏の富山大会準優勝に貢献した富山北部の4番打者江上櫂世選手(3年生)はー。
富山北部高校江上選手「捉えた!と思ってもホームランにならずフライに終ってしまう。これまでと違って飛ばないなっていう感覚でした。試合では強く低い打球を意識してやっていました」
富山北部高校笹野監督:「これまでのバットと(金属の厚みが)数ミリ違うだけですが、特に力のない子どもにとってはその数ミリが結構大きい気がします。本当に木製に近い感覚。ただ安全面ではいいことだと思います」
日本一の木製バットの産地富山 その球児たちは“低反発バット”に適応早い?
今年の夏の富山大会では決勝までの39試合で、本塁打は全7本。48試合行われた甲子園での7本と同じ数です。
伊東さんは、この数字についてこう評価します。
伊東与二さん:「飛ばないバットを使ったにも関わらずこれだけホームランを打てるバッターがいたということは、監督の指導力のたまもの。芯に当てないと飛ばない木製バットを冬場に振り込んできたからだと思います。芯にぶつけるバッティングができていました」
実は、富山県は日本一の木製バットの産地で、プロ野球選手の使用している木製バットの4割を生産しています。
長嶋茂雄さんや掛布雅之さんなど往年の名選手のほか、現役では巨人の岡本和真選手、ソフトバンクの柳田悠岐選手。さらに大リーガーでは、あの大谷翔平選手、鈴木誠也選手も日本でプレーしていた時代には富山県で作られた木製バットを使用していました。
こうしたことから「富山県では小さいころから木製バットに親しみがある」と南砺バットミュージアムの嶋信一館長は話します。
南砺バットミュージアム嶋信一館長:「富山はバット工場が近くにあるので木製バットが手に入りやすい。昔から県内の高校生が買いに来ることがあったけど、低反発バットになってからさらに増えました。プロを目指す子供たちは早くから木製バットで練習しています」
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。