ニューズナウでは鹿児島県内各地の涼やかな風物を紹介しています。今回は、83歳の菓子職人がつくる夏限定の「淡雪羹」です。

涼やかな見た目の和菓子、「淡雪羹」です。羊羹の一種で、ふわりと溶ける雪のような口当たりから淡雪羹と呼ばれるようになったといわれています。

(比良田さん)「だいたい2時ごろには目が覚めますから」

つくるのは、菓子職人の比良田輝明さん、83歳です。

寒天と砂糖を煮詰めます。
(比良田さん)「ちょこっと糸を引くくらいの煮詰め具合でね」

一部を取り出し、色を付けます。
(比良田さん)「涼しいんじゃない?夏は、この色が」

飾りの羊羹も型入れると、すぐに次の行程に。泡立てた卵白と寒天を混ぜていきます。混ぜ続けること約10分…

Q.暑くはない?
(比良田さん)「暑いよ、もう、汗びっしょり」

工場にクーラーはなく、朝から汗が吹き出る暑さ。この時期は、帽子の代わりにタオルを頭に巻くのが比良田さんの定番スタイルです。

(比良田さん)「このまま置いていれば固まってしまうから」

約1時間後…暑い中でつくる涼しげな淡雪羹の完成です。

(比良田さん)「食べなさい、食べなさい」
(Q.どうですか、できは?)「よくできているね、上手だ」

ことし創業58年をむかえた鹿児島市の「菓子のひらた」。店内を見渡すと…並んでいるのはどら焼きだけ。淡雪羹は見当たりません。

(比良田さん)「(昔は)ケーキもいっぱい作っていたし、郷土菓子も。もう10年くらいですかね、どら焼き1本にしたのは」

創業当時から一緒に店を切り盛りしてきた妻の勝子さんが、体調を崩したことがきっかけでした。

(比良田さん)「ここにいて、店番をして手伝ってくれていたんだけど。頼りになる、いろんな知恵をくれる人でした。亡くなるまで店がどんな経営かわからなかった、自分は菓子を作るだけで。いなくなったら、いちからしないといけないから何もわからない状態」

8年前に勝子さんが亡くなってからは、比良田さんの体力が落ちてきたこともあり、看板商品だった「どら焼き」だけが店に並ぶようになりました。

(比良田さん)「昔ながらの砂糖と卵と粉だけで、あんこもこだわって。これはうぐいす。これもうちの奥さんの提案で、『お父さん、あんこを増やしたら?』って」

勝子さんとともに作った「菓子のひらた」の3色どら焼きです。

(客)「(Q.いつぐらいから来ている?)もうだいぶ前から、どら焼きのファンです。おいしいですよ、甘くて」

(比良田さん)「お客さんが喜ぶ顔が一番。『おいしかったど』といってもらえるのが一番」

お客さんの笑顔のために毎年、夏の間だけは、どら焼きに加えて「淡雪羹」も販売しています。

(比良田さん)「2~3人(淡雪羹の)ファンがいて、暑くなったら『まだできないの?早く作って』と」

(客)「(淡雪羹)おいしいよ、年季が入っているから」
(比良田さん)「夏菓子だからな、冷やして食べたらおいしいよ」

(比良田さん)「お客さんと話をするもの楽しい。仕事をしているから元気なのではないかな。あと2年したら店が60周年だから、それまでは元気で。その先は身体と相談しながら、1年でも半年でもできればいいなと思う」

暑い中でもお客さんのためにつくる和菓子たち。夏限定の淡雪羹づくりは、比良田さんが「夏が終わったな」と思う日まで続きます。

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