日向灘を震源とする地震で初めて発表された南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」をめぐっては、避難情報や海水浴場の規制など各自治体で対応に苦慮し、今後の課題が浮き彫りになりました。一方で、食品や防災グッズを購入するなど災害への備えを進める動きが今も絶えず、防災意識が高まっています。

避難情報「判断が難しい」

8月8日に起きた日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震。宮崎県で最大震度6弱、大分市や佐伯市などで震度4を観測し、豊後水道沿岸には一時、津波注意報が発表されました。

この地震を受けて気象庁は、南海トラフ地震臨時情報「巨大地震注意」を初めて発表。8月15日までの1週間対象地域に地震への備えを再確認するよう呼びかけました。

佐伯市は臨時情報の発表を受け、災害対策本部を設置。2021年に作成した対応方針をもとに避難所を開設し、地震や津波への備えを呼びかけました。

この対応方針では、状況に応じて自主避難の呼びかけや高齢者等避難を発令することになっています。今回は見送られましたが、判断の基準について、今後の課題としています。

佐伯市防災危機管理課 武石康麿課長:
「市民に情報発信と自主避難者の受け入れを行いましたが、今回は周辺自治体の状況を考慮して高齢者等避難の発表までには至りませんでした。地震の揺れの規模や津波のレベルなどでなかなか判断が難しいと思ってます」

対応が分かれたのが海水浴場です。県南地域の自治体では津波への注意喚起にとどまった一方、大分市は管理する田ノ浦ビーチを遊泳禁止にしました。

大分市公園緑地課 山下武俊課長:
「津波注意報や警報が出れば即座に遊泳中止と決めています。我々としては安全面を重視した」

日向灘は地震が起こりやすい状態

今回の地震について、京都大学防災研究所の山下裕亮助教は、日向灘でおよそ30年周期で発生しているマグニチュード7クラスの地震の一つと分析。南海トラフ地震の誘発の可能性は低いとしながらも、今後も同規模の地震が起きるおそれがあると指摘しています。

京都大学防災研究所宮崎観測所 山下裕亮助教:
「我々は“割れ残り”と言っているんですけど、今回はマグニチュード7.1の地震が起こりましたが、さらにこの北から北東側ではエネルギーを貯め続けていて、地震が起こりやすい状態にあるとみています」

大分市のホームセンターでは臨時情報が終了した8月15日以降も水や防災グッズを買い求める人が絶えない状態が続いています。

HIヒロセ元町店 渡辺進也さん:
「今回の地震で水もかなり販売されていますけど、防災グッズコーナーもかなり売れています。随時仕入れてはいるんですけども、商品を入荷したそばからも売れていく。買いだめというよりも日頃の備えというところで買い求めている状況です」

高まる防災意識

南海トラフ地震で最大12メートルの津波が想定されている佐伯市米水津でも防災意識が高まっています。

宮野浦地区では、東日本大震災をきっかけに自主防災組織を結成し、海抜20メートルの場所に避難所を整備。今年1月の能登半島地震を受けて非常食の補充や非常持ち出し品をあらかじめ保管できるよう棚の整備などを進めていました。

今回の地震を受け、改めて備えの重要性を感じています。

高橋愛喜区長:
「大地震が起こった場合は自衛隊などが来るのがかなり先になると思うので、やはり自分たちで備蓄しておかなければいけない」

今後も地震や通常とは異なる地殻変動により発表される可能性がある「巨大地震注意」。情報を正しく理解し適切な対応をとっていくことが大切です。

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