長野市で17日、福祉車両から火が出て、従業員と利用者の101歳の女性が巻き込まれた火災。
介護現場を取材すると、人手不足による緊急時の対応の難しさが見えてきました。


真っ赤に燃え上がる送迎用の福祉車両。

長野市の大豆島東団地(まめじまひがしだんち)で17日午後4時ごろ、エアコンの吹き出し口から白い煙が出た後、車の前方から炎が上がりました。

車両には当時、運転していた56歳の女性従業員1人と利用者3人が乗っていました。

このうち、80代の男性2人は逃げて無事でしたが、女性の従業員は火を消そうとした後、後部座席にいた車いすの101歳の女性を助けようとしたとみられます。

女性従業員は意識不明の重体、101歳の女性は全身に大やけどを負いました。

県高齢者福祉事業協会の井上淳哉(いのうえ・じゅんや)副会長は、想定されていない難しい状況だったと受け止めます。

井上副会長:
「事故対策マニュアル等は整備されているが、火災を想定したマニュアルは基本的にはない」

介護現場での送迎はどのように行われているのでしょうか。

井上さんが運営する諏訪市湖南(こなみ)の介護施設「すばらしき仲間たち」。

スタッフはアルコールのチェックを終えると、毎朝欠かさず送迎車のハザードランプやタイヤなどに異常がないか確認してから、利用者の迎えに向かいます。

「おはようございます」

デーサービスで1日に25人ほどが通うこの施設では、1台当たり2人から5人ほどの利用者を乗せて送迎をします。

井上さん:
「中には寝たきりでお風呂のみ利用する人も来られたり、歩行の方、車いすの方、歩行器の方が結構多い」

利用者は60代から90代。

多くの人がすでに免許を返納していて、送迎がなければ通うことが困難だといいます。

利用者:
「自分じゃここに来られないから、迎えに来てくれるから通えているんです。そうじゃなければここには来れないですから」

ただ、業界として深刻な人手不足が、送迎の態勢にも影響しているようです。

この施設では以前は、送迎だけを担当するドライバーがいたものの、現在は、介護を行うスタッフが運転も担っています。

送迎時に車に乗るスタッフの数に法的な決まりはありませんが、事故や車両火災などの緊急時に備えて、人員を増やすことは難しいといいます。

井上さん:
「介護は例外なく人がいないという中で、人を付けられる時、付けられない時は人の波であるので、対策といっても立てるのは現状難しい」
「ただ利用者の安全は確保していかないといけないので、消火器の装備であるとか、そういう対策はしていかないといけない」

利用者の安全をどう確保していくか。

不足する人手とのバランスが課題となっています。

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